現場と現場の移動に時間がある場合、適当に過ごせるカフェなどがないとほんとうに困る。
待つのも仕事のうちなので、この時間をどのように過ごすかも本来の仕事よりスキルが必要だったりする。
カフェをあてにできない場合のルーティンとして、パチンコに行って本日いただける予定のギャランティ分負けてみたり、自分ご褒美ということでご当地スィーツを食べたり、雑貨屋を冷やかしたり…同業者に訊くとそれぞれお好みの過ごしかたがあるらしい。
わたしはギャンブルはやらないし、喋る前は固形物は滅多に食べないし、そもそもウィンドーショッピングは好きじゃない。なのにうっかり買い物なんぞしてしまったら、これからまだ仕事が控えているというのに荷物が増えて気が滅入る。
 
そこで救世主のように現れたのがテラッセ。
 
テラッセってどことなく名古屋弁の響きを持つけれど、歴としたフランス語でテラスのことをいうらしい。
後でできたくせにイオンのフードコートの姉貴然としたフードコート。
なんてったっておフランスですから。
基本的に座るのには店舗で何か注文しなければならないらしいが、だからって注文をしないでものを書いたり読んだりして咎められるという器の狭い話ではないようす。
自由恋愛のおフランスですし。
恋愛とはあまり関係ないかもだけど。
 
この日テラッセのおかげで、別の仕事の原稿を途中まで仕上げることができた。
同じ境遇のようなひともちらほらいらっしゃって、そういうお方は大抵店舗側に背を向けて座っている。
気づいたら背中を丸めて小さくなりパソコンを広げているひとの後ろに、数珠つなぎのようにわたしみたいなわたしがずらっとつづいて、みなさまそれぞれの隙間時間を有効的に使っているのだった。
テラスをテラッセと呼ぶくらいなんだ。
こんなフランスかぶれなら堂々とテラッセ!と叫ぼうじゃない。
恥ずかしい?ぜんぜん!
ビバ!テラッセ!
 
 

関係の綻びやすし秋桜   漕戸 もり

 

 

なんとなく繋がっているようにみえるコスモスの群生。

一本引き抜けば孤独という孤独が根こそぎ剥がれてきそう。