すこし前からエントランスに張り出されている注意事項。
なんだか物騒なもの言いだけど、このごろの空に信じられないものが飛んでいるのをみるにつけ、落下させるつもりのないものが相当数強風に持っていかれているのだろうと推測される。そういえば、マンションだけでなく一軒家でも店舗でも花壇でさえも、よくよく見るとなにやら錘めいたものでいろいろなものが固定されている。
今日前を通った公園のぶらんこなどは、紐で鉄の棒に括りつけられていた。本末転倒のような気がしないでもないが、風のせいでしばらく子どもたちはぶらんこで遊べないらしい。
たしかに、コンビニのビニール袋でさえ歩いていたら顔に吹きつけてくるような状況は、落下物でなくても危険だ。
台風の影響だとわかってはいるけど、いくらなんでも激しすぎる。なにかに腹を立てておさまらない、というように荒れている風のことを、わたしは慰める手立てのひとつも持たない。せいぜい、部屋中の窓を閉め切って冷房をがんがんかけ<ないことにする>しか方法はない。
逃げるのか、おまえ。
いかにもドラマや映画で、気の弱い優柔不断な主人公が言われそうなセリフ。
食卓やリビングにあるランチョンマットやコースターなどのリネン類、新聞や雑誌などの紙類を片っ端から片づけるか、書籍を載せて飛ばないようにしていても、こんなものが?というものがつぎつぎと床にたたきつけられる。相手は扇風機の羽根も時折回すくらいの風だ。
逃げよう。
嫌がらせをされたら闘うのではなく逃げろと教わったじゃないか。
締めきった窓のこちら側から眺める青空に、雲は予想に反し流れてゆかないでもくもくと健康そうに浮かんでいる。
解決はしていない、ということを覚えておかないととおもう。
検出はされませんでした かたほうの夏手袋は空に触れたり
漕戸 もり
道に落ちたり風に舞ったり、かたほうの手袋を歌にするのはもうやめませんか。
ねえ、歌人。
