いくら味音痴でグルメではないと言っていても、

美味しいかそうでないかは、なんとなくだけどわかってしまう。

歳を重ねるというのは、そういうこともふくめてもの悲しい。

そんなこと、知らないほうがしあわせに決まっている。

先日ひさしぶりに4軒はしごしたばかりで、

反省の意味も込めただいま絶賛禁酒中なのだけど、

お祝いを買うという理由があったので、嬉々として酒屋に出かけた。

自分用にはもっぱらネットばかりなので、贈りものを選ぶとはいえ、

店頭でお酒がたいせつに販売されているのをみると、ちょっとうれしい。

仕事でお世話になっているかたへのお祝いである。

そのかたはお酒を嗜まれ、そのうえ日本酒ブランデーウイスキーワインと

酒類も問わないので、ここはお祝いの気もちを伝えやすい赤白ワインに決めた。

訪れたのはエノテカ。

ソムリエさんに予算やお祝いの趣旨、先方様のお好みや、できれば

ボルドーやブルゴーニュなど、値段や味わいが飲む前からわかってしまう

有名な地方やシャトーではないものを、とリクエストして

いっしょにワインセラーへと入る。

さわやかな涼しさのセラーには、宝石のようなワインが眠っている。

驚く価格のワインのことも、投資に向いているワインのことも、

エチケットや壜の種類も、時間にしたらほんの僅かだったけど

とてもたのしいひとときだった。

受験勉強じゃないから、またすぐ忘れるんでしょうけど。

情けないことに(自分用はネットでしか買わないので)

エノテカ価格を前にいつも震えるわたしだけど、こうしてソムリエさんと

店頭でああだこうだ言いながらワインを買い求める<時間>代とおもえば、

それは妥当なお値段なのだろう。

エノテカには、みなさまご存知だとおもうが角打ち的なバーがあり

そのうえ、三越で買い物の合間ちょっと寄るのにちょうどいいサイズ感だ。

※お席は5席ほど

この日もワインをたのしむひとがいらっしゃった。

素性を存じ上げるわけではないけど、そういうひとたちは、

暮らしを充実させているおとなのような気がして、

優雅だしこころの余裕があるかにみえる。

実際にそうじゃないかもしれない、じゃないかもしれないけれど、

事実などどうでもいい。

エノテカのバーカウンターに立ち寄るひとたちも、そう見えることが

お店のエッセンスのひとつだということを知っている。

知っていることがもう、おとななのだとおもう。

 

さて、贈りものを無事選び包んでいただいているあいだ、

店の前にある生鮮食品売り場をぷらぷらと見てまわる。

デパートで野菜や油揚げやきのこ類を買うなんて滅多にないけど、

侮るなかれ。

賢くじっくり選べば安くて状態の良いものはある。

ただし、値段もみないで買っている買いもの客がここには多くいるので、

くれぐれもつられないように。

りんごひとつ600円を「あらおいしそうざます」と

買い物かごに入れていく奥さまと張り合うより、

掘り出し物を探すことのほうがテーマパークにいるみたいで

またたのし、というものです。

 

  菜の花の黄の苦みといふ簡潔なかたちで春の怒りは来たり

                漕戸 もり