谷じゃこさんとは5年ほど前、いやもうすこし遡るか、
覚えているのは、もうすぐ虫武さん(歌人)と結婚するという
可愛らしい歌人さん(みなさまご存知だとおもいますが一応匿名にしておきます)と
第6回現代短歌社賞を受賞したばかりの門脇さん(歌人)がいらっしゃったから、
だいたいその頃というとなんとなく察しがつくだろう。
それくらいまえの、
嶋田さくらこさん(歌人)が企画されたホームパーティーでお会いした。
他にも秀悦な歌人が数人いらしたので、
わたしはずっと脇汗を掻いていて脇汗で溺れそうだったので、
じゃこさんとはおそらく会話らしい会話もしなかった、というより
できなかったように記憶する。
なのにどういうわけかわたしはあの日、じゃこさんを、
歌人というよりクリエイターとして認識して帰ったのだった。
その認識は現在もつづいていて、
この感触をどうやったらわかってもらえるかかんがえてみると、

後にも先にもあんなことそれっきりだったのだけど、

大昔、「ビックリハウス」(随分病弱な幼少期を送っていたので

図書館の本を読みつくして遂にとうとうそこまで辿り着いていた)

という雑誌があって、高橋章子というひとが編集長という理由だけで、

中身も確かめずに母にねだって買ってもらっていたあのような、

頼りないからだを半ば諦めていた幼いこころが、

全身全霊を傾けるみたいな傾倒の仕方で、じゃこさんを見抜いてしまったのだ。

もちろん今では、歌人でもあることも十分承知しているのだけど、

見せ方が巧いというか、

見抜く力が最初から備わっているような(冴え)がじゃこさんにはある。

キティちゃんがあまりにも可憐なので無防備に近づくと、

たじろいでしまうようなまなざしにおどろくことがあるが、

じゃこさんとキティちゃんはどこか似ている。

 

その谷じゃこさんが編集を手掛ける

短歌で遊ぶフリーペーパー「バッテラ」の43号(2022年11月発行)が出た。

毎回、ゲストとじゃこさんの会話が聞こえてきそうな内容で、

雑多な一日にひと息つくときなど、気負わず読めるあたたかな読みものだ。

今回のゲストは歌人の枝豆みどりさん。

短歌雑誌にも積極的に投稿されているので、

枝豆ファンのかたも多くいらっしゃるとおもう。

この枝豆さんとじゃこさんの歌の相性がとてもいい。

ほんとうにいい。

フリーペーパーなので是非お手に取ってご覧いただきたいので、

勿体ぶってそれぞれ一首だけここにご紹介しておく。

 

  ひとときをうるさくさせてごめんみんな私のミックスジュースのために

                 谷じゃこ(「バッテラ」43号より)

  曇天の微かなひかりがちょうどよく変な二人を映しだしてた 

                 枝豆みどり(「バッテラ」43号より)

 

「すてきな喫茶店」というタイトルに合わせて詠まれたじゃこさんの歌。

もちろん同様に枝豆さんの(題詠?)歌も掲載されているのだけど、

つづいては、敢えて枝豆さんの連作「リマインド」から取り上げてみた。

「バッテラ」の編集のすばらしさは、

それぞれの特集がぶつ切りにならずに、呼応しあっていることだ。

隅々まで(感想もらえるとうれしいです! の文字ですら)まとめて

ひとつの球体だという手ごたえをかんじるのは

雑誌「ビックリハウス」に通じるものがある。

そのうえ、じゃこさんと枝豆さんの短歌は相性がいいので、

43号は向かうところ敵なしだ。

敵?敵なんか最初からいないのだけど、

強いていえば「バッテラ」の他の号だ。

まあでも、兄弟姉妹切磋琢磨しているようすを眺めるのも楽しいものである。

 

そういえば、食べもののじゃこと枝豆の相性は抜群である。

釜揚げしらすと茹でた枝豆を、さっくりと薄く伸ばした酢味噌で和えれば

お酒はキンミヤでじゅうぶん。

悪魔のささやきはこんなところにもひっそりとある。

 

 

 当たらない天気予報のいいところ滲まず書ける7Bの鉛筆  漕戸 もり

 

 

わかるひとにさえわかればいい。