県外に行くのでPCR検査を受けに行った。
国の旅の支援を受けるためだ。
元来アレルギーがあり、コロナワクチンの二回目で死にそうになったので
三回目を接種していないという理由。
なんだかこれっておかしくない?とふわふわした気持ちのまま
検査をうける。
でね。
おもわず写真を撮ってしまったレモンと梅干の写真。
検査のために唾液を試験管にためるのだけど、
選挙のようにひとりずつ仕切りされている長机に
背中をまるめた(唾液を試験管にためているひと)人が
ずらりとならんでいて、
選挙に行けば、記入コーナーの
政党とか候補者が表示されているちょうど目の前に、
レモンと梅干の写真はあるのだった。
これをみつめるしかない狭い仕切りのなかで、
そうしていれば唾液が出るらしかった。
結局。
おじいちゃんおばあちゃんの言っていたことは
案外まちがいじゃないということなんだなあ、と
祖父も祖母もましてや父ですらこの世にいなくなった今
しみじみおもっていたら
唾液どころか涙も鼻水も出てきて
昨夜のアルコールも全部出て、
それなりに効果はあったんじゃないかとはおもう。
わたしには、だけど。
 
そうしているうちに、
ここにいる係のひとたちも、検査薬も
レモンと梅干の写真の撮影代金でさえ税金なのだなあ、と気づくと

次第に腹立たしくなってきて、

帰りに渡辺でワインを数杯飲み干して帰ってきたので、

一体全体得したのは渡辺さんだけだったというオチだった。
 
ところでPCRとは
 Polymerase Chain Reaction (ポリメラーゼ連鎖反応)の略で
聞けば高校の生物の教科書でみたことがあるような横文字だけど、
こんなわたしにもちゃんとDNAというものが存在して、
生物らしく生存しているのだと改めておもうと感慨深い。
生殖機能はもはや用無しになり、殺人事件の容疑者にでもならない限り
意識することもなかったDNAが、
レモンと梅干の写真のお陰でじわじわと染み出てきたので、
とりあえず滞りなく調べられてよかった。
 
 
  梅探る内面はいいひとなのだけど   漕戸 もり