言葉の音符

言葉の音符

短歌のブログです

 

近づかず 離れていかず ひとすじの

リールを伸ばすような関係

 

引っ越し完了

どっちを向いても段ボールの山

 

一日の仕事をすべてなし終え

夜のしじまの中で 煙草をぷかりとふかした時

ふと見た時計の針が

私達が訪れていた時間をさしていた時

彼らは

一抹の寂しさを感じるかもしれない

 

かつて 私達が座った椅子にはほかの誰かが座り

他愛のない話をして笑い

じゃあまたねと コーヒー一杯分のコインをカウンターに置き

それぞれの寝床に帰っていく

新しい出会いと 新しく流れる時間は

感じたはずの一抹の寂しさなど

簡単に吹き飛ばすだろう

 

それでいい それでいい

 

私達も

彼らのコーヒーを淹れる手つきや

話してくれた切なさを思い出しながら

新しい場所での暮らしに汗を流す

 

懐かしい出会いも経験し

そのうち

新しい出会いもあるだろう

 

感じたはずの寂しさを

簡単に吹き飛ばす威力があるだろう

 

それでいい それでいい

 

いつかまた

久しぶり! って言える日が来るから

 

久しぶり

 

 

 

いくつもの さよなら超えて また一つ

重なる年の 春の一番

 

その節は 一期一会をありがとう

必死で生きてる 旅の途中で

 

コーヒーで 温んだ心 手土産に

わずかばかりの 時間を置いて