思い返してみれば 約11年近く前のこと
自分が初めて豆を焙煎した日だ。
「なんて美味しくないコーヒーなんだろう・・こんなの飲んだらお腹壊しそう。
焙煎豆の見た目もえらくシワシワで、薄皮が沢山残っててきちゃないなぁ。
酸っぱいし、渋みが強いし、香りのかけらも感じない・・。」
その後 胃がキリキリしだし 数時間後にはお腹の調子が悪くなってトイレとお友達。
スタートはそういうコーヒー しか 作れなかった。
「焙煎歴 1日」 の自分にとって 自分の店で 自分が焼いた豆を売るとか
その豆でコーヒーを淹れてお金を頂く なんてことは 全くもって現実的ではなかった。
始めてしまった コレ本当に、大丈夫か・・? 不安しかなかった。
でも唯一 自信を その時から今だに変わらず持ち続けているものがある。
自分の舌 自分のコーヒーという飲み物の味に対する、感覚だ。
簡単に分けて言うとすれば2通り。
「こういうコーヒーはおいしい」 「こういうコーヒーはおいしくない」
自分にとっての、という前置きはさせてもらうが
その判別にだけは かなりの自信を持っていたし
どれだけまずい焙煎豆ができあがったとしても
「こんな味ができた、もっとこういう味にしたい」 という向きだけは
いついかなる状況においても明確だった。
焙煎し始めた頃から、ある程度の豆が出来るようになるまで
その全てを飲んだ。 どれだけ身体を壊そうとも、飲み切った。
どうすれば1日でも長く「おいしい」を保てるのか
どうすれば自分の欲しい味にその豆を近付けることができるのか。
そもそも虚弱体質な自分でも やさしく飲めるコーヒー を考え作ろうとした。
だから自分の中での ネガティブな味 については
いまだにひときわ敏感に感じ取ってしまう傾向がある。
あらゆる おいしくないコーヒー を自分で作って それを飲んできたから。
どこでコーヒーを飲んでも 無意識にあらさがしをしてしまう。
そしてそのどこかしらで飲んだコーヒーのあらを
「あぁきっと、こうなるのは、ああいうのが起因するんだろうな」 と
解析してしまえる、という、コーヒーを楽しむという概念からすれば
正直 楽しめないタイプ の人間になってしまった。 これはもう治らない。
自分が焙煎したおいしいコーヒー豆 を沢山知ってるけど
その倍以上 自分が焙煎したおいしくないコーヒー豆 も知ってる。
これもきっと 自分の強み なのかもしれない。
今はもうネガティブな捉え方はしていない。
その過程を経たことで 今の自分がある。 作りたい味が明確化してる。
いまだに自分にとってのおいしいを見分ける舌の感覚に自信がある。
ただ単に よそでコーヒーを飲むことに対して ある程度の諦めじゃないけど
自分が感動するような一杯にはきっと出会えないと思っているのかも。
棚に上げてものを言いたいわけじゃない。
自分が 一番だ とは一切思ってもいない。
あくまで 負けないものを作っている自信 があるだけ。
勝っているかどうか という尺度はこの業界で設ける意味はないと思ってる。
今の時代 あらゆるコーヒーの 競技 があるけれど
正直な気持ちとしては あれは必要のないものだと思う。
その 比べる必要性 を自分は感じないから。
当事者の頭の中でやっときゃいいのに、って。
でもこれも、自分のひん曲がった頭のせいだろうから
業界人の皆さんがご覧になられてたら、スルーしてね。笑
単純に 「ある競技においてのてっぺんを目指す」 という志の部分だけは
肯定します。 それ意外は、無関心であるという立場でこれからも居ると思う。
みんなちがって みんないい。
その考えはまず絶対的なことだと思うし
誰かを否定して自分を正当化するようなマネはすべきじゃない。
あらゆる 作りたいコーヒーのカタチ がリスペクトされてほしいし
よそにケチをつけるようなことはもう自分はしたくない。
色々と感じることがある、それぐらいに留めておけばいい。
さっきも書いたように 自分には自分のやり方があって
作りたい味 が明確で 向いている方向を自分が理解できている。
この豆なら 自分にとってのベターなのは こうだ と言い切れるような
組み立て方を すぐ閃いたり 試し方の順番がどんどん頭に浮かんでくる。
そういうアタマ にようやくなってきた10年目。
もちろん まっだまだ自分の伸びしろを感じるし
まだまだ自分のコーヒーはおいしくなる一方だと考えている。
この仕事には終わりもなけりゃ 満足も死ぬまでしようがない。
変わったことを言うようではあるけど 命を削るほど 味は良くなると思っている。
自分がコーヒーのこと考えて考えて 悶えて 苦しんで 苛々して 悩んで。
時にそんなネガであふれた自分でなければ生み出せないようなコーヒーがもつ輝きは
そんじゃそこらで拝めるものではないと 自分が出来上がったばかりの焙煎豆を見て
毎日のように感じてる。 「これ、他の人には作れないよ絶対」 って。
どれだけ烏滸がましい事を言うようであれ 疑いもなく
ウチのコーヒーは美味しい。 と一言言い切れることだけは
自分の強みなのだろうって。
作品。
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普段家では缶コーヒーばっかり 外ではスタバにコンビニコーヒーばっかり
飲んでるプロの焙煎士 ですけど ですけど 色んなこと、考えてます。
世の中にあふれたコーヒーのトレンドや評価基準に対しては本当に色々と
思うことはあるけど それはそれ これはこれです。
自分はこうしたい 自分だからこれができる 自分のコーヒーはこうだ
そう言い切れるものを作れる自分を、もっと成長・進化させていこうと思います。
そのすべてが お客さんの感動と「おいしい」の一言に繋がっていく。
僕だって最初はなにひとつおいしいコーヒーを作れませんでした。
自分が納得できるコーヒーはまだまだ作れる気配すら感じていません。
今の段階でのベターを積み重ねてきた最善のものを出し続けてこれてるという
その自信があるから、心折れず、店をずっと続けてこれています。
まだまだ道半ば。 死ぬまで満足せず、登り続けたいんですよね。
命懸け なんてオーバーな表現かもしれないですけど
そういう気持ち では居てます。 いつでも。 いままでも。 これからも。
6月までは 本日のコーヒー1杯450円 エスプレッソ350円 で飲めます。
原料高の影響も少なからずありますが それとはあまり関係はなく、
10周年を機に、店内のコーヒー系の飲み物を全て値上げします。
10年前の自分の技術に付けた値段から ようやく脱します。
10年分の自分が続けてきたコトの分、すこしずつ対価にのせます。
責任 と 覚悟 を 値段という見えるものとして纏わせていきます。
なので つける値段については 多くの人が思う値段よりも
少し高く感じる人も居られるのかもな そう思っています。
思っています、が、これが僕自身の成長にも必ず繋げていくこと
そして それがちゃんとお客さんに 還る 還す が成立することをお約束し
11年目のイレブンを迎えたいと思っています。
こんなもんじゃない。 自分はまだまだ。。