一応、Clufy skyの続きです~。

色々悩んだ結果これで。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

空港に向かうタクシーの中で、

京介は空を見上げた。

 

雲が広がった空。

灰色の重たそうな雲からは、

小さな水滴が降り注いでいる。

 

それでも、空の一部には、

澄んだ青色がのぞいていた。

 

「雨、あがるそうですよ。」

 

運転手が、前を向いたまま声をかけてきた。

 

「そうなんですか。」

 

「明日は、晴れるようです。

お客さん、旅行ですか?お仕事ですか?」

 

「・・・逃亡です。」

 

「え?」

 

信号で車が止まり、運転手が振り向いた。

 

「いえ、なんでもないです。」

 

京介は笑って、顔を横に振ってみせた。

 

再び黙って窓の外を眺める。

雨は、霧雨に変わっていた。

 

手を伸ばして、雨を確かめ

傘を閉じようかどうか迷っている人が見えた。

 

かすかな霧雨。

傘を差さなくても、支障はないような気がする。

 

でも、ずっと降られたままにしておくと、そのうち、

髪も服もしっとりと水気を含んでしまう。

見えないような小さな水滴に、

いつの間にか濡らされてしまうのだ。

 

そして。

彼の中にたまっていく水滴を、

見ないようにしてきたのは自分だった。

 

言葉の端に、微笑みの中に。

感じるものはあったのに。

 

その水滴は、

多分、寂しさ。

 

かすかな寂しさは、

次第に集まって悲しみの海を作る。

 

それは。

 

「お客さん、もうすぐ空港に着きますよ。」

 

運転手の声で、我に返る。

前方を見ると、空港が見えてきた。

 

 

ふっと、あるセリフが頭をよぎった。

 

『俺は、恋人失格なんだそうだ。』

 

かつて、2人が出た映画の中で、

彼が言ったセリフ。

 

恋人の変化に気づけなかったギイへの

三洲からの言葉。

 

今、まさに自分は

『恋人失格』なんじゃないか。

 

気づけた変化。

見過ごした彼の気持ち。

 

そして、このまま、逃げるように

行ってしまうこと。

 

NYへ戻ったらどうなるのか。

取り返しがつかないんじゃないか。

 

 

そんなことを思う内に、

タクシーは空港へ着いてしまった。

 

現実は、自分と彼の距離を

広げようとしているかのようで。

 

だが。

タクシーが止まったその時、

スマホが鳴った。

 

 

 

 

 

 

幸いにして、というべきか

不幸にしてというべきか。

 

京介を空港まで見送るつもりもあって、

その日は、仕事を入れないように

調整してもらっていた。

 

体が重い。

ゆっくり起き上がって鏡を見ると、

酷い顔がそこにあった。

こんな顔では人前に出られない。

 

それでも、無理やりにでも何かをしていた方が、

気が紛れたかもしれない。

 

後悔と呵責。

繰り返し考えてしまう。

 

口にすべきでないことを口にし、

彼を傷つけるような真似をした。

 

自分は、こんなにも

コントロールの利かない人間だったかと。

 

「情けな・・・。」

 

また、ベッドに倒れこむ。

 

もう少し、時間が欲しい。

立ち上がるためには。

 

今はまだ、京介とのこれからを

考える力もない。

 

あるのは、不安だけ。

もしかしたら、このまま、

彼を失うかもしれないという不安。

 

ため息をつくと、目を閉じた。

 

しばらく、休みたい。

 

 

その時、朦朧としている意識の奥で、

何かの音を聞いた気がした。

 

そう言えば、玄関の施錠をしていなかった。

空き巣?という考えを振り払う。

もう、なんだかどうでもよかった。

 

ベッドがわずかに揺れて、

何かがすぐ側に置かれた。

 

「不用心だね、鍵空いてたよ。」

 

置かれた、と思ったのは、

京介がベッドに腰かけた振動だった。

 

「な、なんで?まお・・・?」

 

飛行機で飛び立っているはずの人が

目の前にいて、大輔は混乱した。

慌てて起き上がろうとしたら、

京介に肩を押されて、再び寝かされる。

 

「ゆうたから電話もらって。」

 

京介が笑った。

 

「叱られた。あんな状態の

大ちゃんを置いて帰んなって。」

 

そういえば、電話があって、

雄大と話したような気がする。

何を言ったか覚えてないが。

 

「・・・何やってんだ、まお。

仕事の予定がつまってるって言ってただろ?」

 

なるべく冷たく言う。

京介をここに引き留めるわけにいかない。

そんなことをしたら・・。

 

「うん。だから無理やり変えた。」

 

「無理やりって・・・。」

 

「クライアントに謝って、会社に頼み込んで。

調整してもらって、飛行機の席もなんとか確保した。」

 

嬉しくないはずはなかった。

多忙な京介が、自分のために予定を変えてまで

来てくれたのだ。

 

だが。

これではいけないという気がした。

自分のせいで京介に迷惑をかける。

 

それに。

 

「帰った方がいい・・。

今の俺は、お前に何するか・・。」

 

自信がない。

いつもの、余裕のある自分ではないから。

 

「大ちゃん・・。」

 

京介が体を傾け、大輔に

覆いかぶさるようにして顔を近づけた。

 

「たった1日じゃ、足りないとは思うけど。」

 

天使のような微笑みが近づく。

 

「残り1日は、大ちゃんの好きにしていいよ。

・・・俺を好きにして。」

 

「まお・・・。」

 

「閉じ込めてよ、ここに。世界から隔離して。」

 

眩暈がする。

その言葉がまるで魔法のようで。

 

京介の体に腕をまわして抱き寄せると、

深く口づける。

 

さっきまでの、彼を失いそうな不安のせいか、

キスをやめられない。

 

確かめても、確かめても。

すぐに消えてしまいそうで。

 

時間を忘れたかのように、

繰り返されるのは、ただひたすらに

相手を求めるだけの行為。

 

でも。

大輔は急に京介を押しやった。

 

「ダメだ、まお・・。もう帰れ。

俺は、どうかしてただけだ。

時間が経てば、またいつも通りに・・・。」

 

できるだろうか。

以前のように。

京介を優しく送り出せる自分に。

 

「そう・・・。じゃあ、

俺が大ちゃんを閉じ込めるよ。」

 

京介が笑ってそう言った。

 

「まお・・・?」

 

「どこにも行かせない。誰にも会わせない。」

 

大輔にのしかかるように体を重ねて、

離れられないように押さえつける。

 

「あと1日は、俺が大ちゃんを好きにするから。

いいよね。」

 

大輔が答える間もなく、

また唇を塞がれた。

 

 

 

 

 

どれくらい時が経ったか

分からない。

 

カーテンを閉め切った部屋は、

外の明るさも分からなくて。

まだ昼間なのか、夜なのかはっきりしない。

 

時間を確認したくて、

スマホに手を伸ばそうとすると、

京介に腕を掴まれた。

 

「スマホは禁止。」

 

「何時か気になったんだ・・。」

 

「いいよ、時間なんて。知らなくても。」

 

掴まれた腕はそのまま下ろされて。

 

「言ったよね、閉じ込めるって。

俺たちに時間は必要ないよ。」

 

京介の長い指が大輔の指に絡まって。

もう、何度目だろう。

キスが降ってくる。

 

「喉が渇いた・・・。」

 

「分かった。」

 

サイドテーブルに置かれたペットボトルを手に取ると、

京介が自分の口に含もうとする。

 

「自分で飲んじゃダメなのか?」

 

「ダメ。」

 

口移しで当たられる水は、

京介の熱を含んでいて。

それでも、必死に飲み干す。

 

本当に閉じ込められているような感覚。

世界には2人しかいないような、そんな幻想。

 

そんな中で。

目を閉じて、京介の体温を感じる。

 

ぬくもりが愛おしい。

 

「閉じ込められて、どんな気分?」

 

京介の声がして、目を開けた。

大きな瞳が見つめている。

 

「辛い?」

 

「・・・いや。」

 

「苦しい?」

 

「・・・そんなことないよ。」

 

「じゃあ、何?」

 

大輔は微笑んで、京介の顔に触れた。

 

「・・・嬉しいよ、まお。」

 

本心からそう思っている。

 

「まおが俺を求めてくれることが。」

 

京介はじっと見つめてきた。

それからゆっくり口を開く。

 

「いつだって、求めてるよ。」

 

「まお・・。」

 

「ずっと自分の側に置いて離したくない。」

 

温かい掌が大輔の顔を包む。

 

「大ちゃんだけじゃないんだ、

寂しくて、会いたくて・・。」

 

優しい頬へのキス。

 

「会えたら、ずっとそのまま

一緒にいたいって思うのは。」

 

反対の頬に、額に、瞼に。

 

「時には、無理やりにでも押さえつけて

思い通りにしたいって考えることがあるよ。

だって、それくらい・・・。」

 

最後に、唇に。

 

「愛しているから。」

 

「ごめん・・・、まお。」

 

大輔は京介を引き寄せて、

力いっぱい抱きしめた。

 

「同じだよ、ただ・・。」

 

他に言うことなんてなかった。

 

「愛しているんだ。」

 

そう、それだけ。

ただそれだけなのに。

 

こうして、愛しさも寂しさも全部。

 

全てを抱え込んでいると、時には

行き過ぎるくらいの想いが押し寄せてきて

どうしようもなくなる。

 

会いたいときに、会えないから。

簡単に会える距離ではないから。

お互いに、こんな自分を知られたくないから。

 

 

だから、たまには吐き出して。

強引な位に無理をしたりして。

 

そうやって、2人で時間を

積み重ねていくしかないんだ。

2人でどこへ向かうかは

分からないままだとしても。

 

迷いながら、選んでいくしかない。

これから、先も。

 

相反する愛情を抱えたままで。

 

 

 

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もし、横井監督映画なら、

空港から走るのでしょうか?

まおくん(爆)。

 

色々やってみて、

やっぱり2人を引き離したくなくて、

結局その日のうちに解決パターン。

 

2人を別れさせるのは、

今の私には無理なようです~o(TωT )