成長産業の育成が先でしょ! (ーー゛)

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政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員が提案した解雇規制の緩和が議論を呼んでいる。企業経営者らは正社員の解雇をしやすくすれば不採算部門からの撤退が容易になり、競争力向上につながると期待しているのに対し、専門家の間には「不当なクビ切りが横行しかねない」との慎重意見も強い。安倍政権は、従来の雇用維持重視から労働移動を促進する姿勢に転じているものの、6月に策定する成長戦略で具体的な緩和方針を打ち出せるかは不透明だ。
◆ルールの明確化訴え
3月15日、首相官邸で開かれた産業競争力会議に経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業社長)が「人材力強化・雇用制度改革について」と題した資料を提出した。
7ページに及ぶ資料では、大企業の「人材の過剰在庫」を指摘し、事業環境の急激な変化に対応するため、労働移動を促す制度の必要性を強調。その一環として、「解雇自由の原則を労働契約法に明記し、解雇の際に労働者にどういう配慮をすべきかという規定を設けるべきだ」と解雇ルールの明確化を訴えた。
会議ではローソンの新浪剛史社長も「解雇法理は(企業が)世界経済に伍(ご)していくうえで厳しいので緩和すべきだ」と同調し、この問題に企業経営者が高い関心を抱いていることをうかがわせた。
内閣府によると、全雇用者数から最適な雇用者数を差し引いた社内失業者数は465万人(2011年9月時点)と推計され、労働市場の硬直性は明らか。その要因とされるのが解雇規制の厳しさだ。
◆企業に高いハードル
労働契約法第16条は「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とする」と、解雇権乱用に歯止めをかける一方で、明確に有効と認められる要件は書いていない。
「合理的」とされるのは規律違反のほか、業績悪化による整理解雇も認められるが、判例では(1)人員整理が本当に必要な経営状態(2)役員報酬削減など解雇を避ける経営努力をした(3)人選が合理的(4)労使協議など妥当な手続きを踏んでいる-という4要件を満たさなければ無効とされており、企業側にとってハードルは高い。
その結果、成長産業への人材の移動が進まず、産業の活性化の足を引っ張っているというのが民間議員の主張だ。長谷川代表幹事は「全面的な解雇の自由化を求めているわけではない。見直すべきものは見直そうという趣旨だ」と強調する。
これに対し、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎・統括研究員は「解雇を議論するならば、雇用形態のあり方も含めて考えるべきだ」とくぎを刺す。
日本企業の正社員は手厚く雇用が守られるが、代わりに企業の人事権が強く、勤務地や職種の自由度が少ない。濱口氏は「解雇しやすさを追求すれば、企業の権利だけがより強まり、不当な解雇が可能になる恐れがある」と指摘する。
■再就職支援拡充 労働市場の活性化目指す
政府側も解雇ルールの明文化については「経営状況や雇用環境によって判断が異なるので難しい」(厚生労働省)と消極的だ。ただ、田村憲久厚労相は競争力会議で、「労働者のスキルアップにより、失業を経ない円滑な労働移動への対応を目指す」と雇用の流動化に前向きな姿勢を示した。具体的には、勤務地や職務を契約で限定する正社員という雇用形態の導入を提案。企業が不採算拠点から撤退する場合などに解雇が認められる契約を社員と結ぶことで、配置転換で余剰人員を抱えないような仕組みを構築する。
また、休業手当の一部を助成して一時的に失業を防ぐ「雇用調整助成金」を大幅に縮小。企業が事業縮小などの際、従業員の再就職支援を補助する「労働移動支援助成金」を拡充し、労働市場の活性化を目指す。
政府は成長戦略にこれらの労働移動を促す政策を盛り込み、雇用の流動化を目指す姿勢を鮮明にする見込み。ただ、労働者の受け皿となる成長産業がなければ、解雇規制の緩和や再就職支援の拡充なども「失業なき労働移動」にはつながらない。労働政策の行方は、最終的に安倍政権の経済政策「アベノミクス」が新産業を育成できるかにかかっている。(会田聡)
【用語解説】欧米の解雇規制
厚生労働省や労働政策研究・研修機構によると、米国では解雇は原則自由と考えられているが、人種や宗教、性別、年齢などによる差別は法律で厳しく規制されており、解雇事由として意図的な差別が認められれば、企業側が訴訟で懲罰的な損害賠償を請求される恐れがある。一方、ドイツでは、10人以上の事業所で6カ月以上働いた労働者に適用される解雇制限法がある。整理解雇の正当性について、日本と同じように詳細な条件を定めている。
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