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日本と韓国は12月、総選挙(16日)と大統領選挙(19日)で政権が交代する。両選挙の台風の目は、日本のニューヒーロー、橋下徹氏と韓国ITビジネス界出身の新星、安哲秀候補を支持する浮動票の行方である。両国国民は新時代に「新しい国のかたち」を期待しているようだ。具体的には経済問題と政治改革だが、背景にはグローバル化で社会に広がった格差に対応できない既存の政治勢力への強い不満がある。閉塞(へいそく)感ゆえに選挙に関心が高まっている日韓事情には、共通点もありそうだ。(久保田るり子)
■「中央統治機構をぶっ壊す」という橋下徹氏、「既成政党には自浄能力なし」という安哲秀氏
『新しいリーダーシップと国政運営でガバナンス(統治)の時代を切り開く▼徹底した政治改革▼国民の信頼回復▼新しい政治と政権交代に向けた国民連帯』-日本の「日本維新の会」のスローガンのようだが、実は韓国の最大野党、民主党から立候補している文在寅氏と無所属の安哲秀氏が今月中旬の候補一本化の協議で合意した「新政治共同宣言」の骨子である。
日本の総選挙は橋下&石原氏の維新が、韓国の大統領選挙は文&安氏の野党系が、ともに既成勢力に挑むという構図だ。もちろん、大勢は日本の場合は自民党の政権奪回が焦点。韓国は与野激突による保革の対決である。しかし、日韓ともに既成VS新興という新しい風が吹いているところが興味深い。政権交代をかけた政党間の総選挙(日本)や保守・革新間の激突(韓国)だったこれまでの選挙とは様相が異なっている。
石原・橋本両氏の政策合意は中央集権体制打破に始まり、道州制協議など「新しい国のかたち」を目指す。一方の韓国野党系2候補も、国会議員の定数削減や経済民主化(財閥への規制)など既成のシステムへの挑戦で、国民の「既得権層への不満」を代弁することになる。
韓国大統領選は、候補者登録最終日の来週26日までに文、安両氏が一本化の結論を出すとしている。一本化ができれば与党の朴槿恵候補と野党2候補の「三つどもえ」となるが、一本化が実現すれば与野激突である。
■日韓選挙の背景にグローバル化による格差問題
日韓の「アンチ・ヒーロー」の背景には、両国ともに政治が硬直化し、既存の価値観への反発が国民的に広がっている世相がありそうだ。
政治体制や歴史的背景の異なる両国で、選挙の争点がともに「政治のありかた」を問うことになった背景について、日韓比較政治の専門家は「世界的な経済のグローバル化によって両国の社会に顕著な格差が広がったことが大きい」と指摘している。
日本では、生活保護受給者が過去最大の213万人を記録し、貿易赤字が過去最大を更新中だ。民主党政権の進めた脱原発政策で原油や石炭などの輸入額が増大する一途となり、一方で外交失策によって日中関係は悪化、対中輸出は8割減となった。
また、韓国で好調なのは財閥系大企業だけだ。
「韓国では若者はいい大学を卒業しても半数が就職できない。財閥中心の輸出経済は好調でも自分たちの生活には何の利益もなかった。結局は既得権層だけの優遇だったと、李明博政権は強い批判にさらされている」(韓国紙記者)
社会的な不満が、旧態依然で機能不足の政治全般への批判に向かったというわけだ。
■韓国の場合、大統領選挙最大の争点は「経済民主化」
現代財閥出身でCEO大統領を任じた李明博大統領は5年前、『7%成長、1人あたりGDP4万ドル、世界で7番目の経済大国入り』という「747政策」を掲げて当選した。青瓦台(大統領府)に財閥オーナーとのホットラインを引き、財閥優遇策で法人税を減税し、ウォン安誘導を行って米国発のリーマンショックもいち早く乗り切った。その結果、サムスン電子、現代自動車の2社で2012年1-3月期の営業利益が韓国全企業の36%という経済の極端な集中が起きた。
だが、いまや財閥だけが過去最高益を更新する経済政策、国政運営そのものが批判の的になっている。大統領選最大の争点といわれるのが、この財閥経済を打破する「経済民主化」である。
「経済民主化」とは財閥系大企業の規制強化と不正処罰強化のことで、傘下企業への出資を規制し、最終的には財閥の資本構造それ自体を解体しようとするもの。またこれまでは、財閥トップに不正が発覚し処罰されてもその後恩赦で救済されてきたが、「民主化公約」ではこの優遇を撤廃するという。
各候補ともに「経済民主化」を公約に掲げた。規制や処罰は朴氏が財閥に一番甘く、安氏、文氏の順で厳しい。しかし程度の差はあるものの、法制化されて厳密に施行されれば、これまでにない「財閥たたき」「財閥解体」になる経済規制となる。
こうした日韓で高まる「新しい国のかたち」への国民的な関心は、新時代を迎える日韓関係にも、少なからぬ影響を及ぼすことになりそうだ。
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