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今年4月7日~5月12日まで、東京メトロの有楽町線・江戸川橋駅近くのYUKA TSURUNO(ゆか・つるの)という現代美術のギャラリーで狩野哲郎さん(昭和55年生まれ)の個展が開かれた。シコンヒワという小鳥をギャラリー内に持ち込み放し飼いにした。ネズミ捕りのカゴや円い穴を開けた箱などが置かれていた。インコのように人に慣れた鳥ではなく、人に慣れていない鳥がいったいどんな動きをするのか。ネズミ捕りのカゴも鳥のお気に入りで、常に出入りしていたという。
そんな不思議な発表をした狩野さんの展覧会「純粋な標識」が群馬県渋川市にあるハラミュージアムアークで開かれている。狩野さんは1週間ほど滞在して制作を行った。その成果を美術館で見ることができる。美術館の1室のギャラリーでは立体作品などを展示しているのだが、興味深いのは美術館全体を舞台としたインスタレーション(空間展示)だ。いわば東京のギャラリーで行った屋外バージョン。美術館の建物の外壁には、畑などに使う鳥除けの赤いネットが張られていたり=写真、芝生のきれいな前庭には1坪にも満たない鳥のエサ場も設けられた。小鳥用のエサを置いているそうだが、いったいどんな鳥がやってきて、ちゃんとエサをついばむのだろうか。美術館スタッフによるとエサ場には夜になるとタヌキがやってくるという。鳥のエサをタヌキが食べてしまう。予想外のことだ。
狩野さんは常に現実に疑問を抱いている。鳥よけネットも本当に鳥除けになっているのだろうか、と。そもそも人間が使っているさまざまな道具は、人の常識や価値観で塗り固められている。だから普通は疑問に思うこともない。狩野さんは鳥を使った表現をしているが、単に鳥の行動だけを問題にしているのではない。常識や価値観を疑わせる。現代の美術は単に絵画や彫刻を見せることではない。心に訴える情熱的な絵画もいい。が、物の見方を根底から覆す現代アートも面白い。狩野さんのような予想もしないアートが生まれるのだから。(渋沢和彦)
10月24日まで(木曜休館)、群馬県渋川市金井2855の1、ハラミュージアムアーク。入館料一般1000円。(電)0279・24・6585。
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