信号待ちなどで自動車が停車した際にエンジンが自動的に止まり、アクセルを踏むと再始動する「アイドリングストップ機能」。自動車メーカー各社が相次ぎ投入し、省エネや二酸化炭素(CO2)排出削減の意識の高まりから普及している。そんなアイドリングストップ機能を搭載したエコカー(環境対応車)に欠かせない電子部品を、パナソニックが生産しているのは意外に知られていない。
“脱テレビ依存” ソニー・パナソニック「歴史的提携」の舞台裏
アイドリングストップ機能については、マツダが3年前の平成21年に「i-stop」を開発したことで認知度が急上昇した。i-stopは従来システムよりも大幅に速い0・35秒でエンジンを再始動できるため、車の再発進がスムーズになる特徴を持ち、現在は5車種に搭載している。
マツダに続き、日産自動車や富士重工業、ダイハツ工業、三菱自動車も相次いでアイドリングストップ機能を導入。トヨタ自動車も新型カローラに同機能を初めて採用するなど、導入車が増えている。
このアイドリングストップで課題となるのが、エンジン始動時のバッテリー消費だ。これまではエンジンが始動する際、車内のオーディオやカーナビ、エアコンなどの車載機器が一時的に停止していた。バッテリーの出力をエンジン始動に集中させるため、他の機器の電圧を降下させているからだ。
しかし、信号待ちや渋滞でエンジンの停止、再始動を繰り返すたびに車載機器の電源が一時的とはいえ落ちていたのではドライバーはたまらない。それを防ぐのが「DC-DCコンバーター」と呼ばれる電子部品だ。
DC-DCコンバーターでは、バッテリーの直流電圧(12ボルト)を車載機器へ出力する5ボルト、3・3ボルトといった直流電圧に変換。アイドリングストップ車に搭載されるDC-DCコンバーターは、内蔵コンデンサーに電気を蓄えることで、エンジン始動時にバッテリーからの電圧が急降下しても車載機器へ出力する電圧を維持でき、車載機器は停止しない。
パナソニックは、DC-DCコンバーターの業界大手で、福島県内の工場で生産している。納入先は明らかにしていないが、複数の自動車メーカーに供給している。工場の稼働率は好調に推移しており、薄型テレビの販売不振に苦しむ同社にとっては新たな商品の柱の一つとなりつつある。
同社によると、デジタルカメラなど各種家電、AV製品を生産するために半導体や電子部品を内製してきたノウハウがDC-DCコンバーターにもいかされているという。
ハイブリッド車、電気自動車のように大型モーターや大容量のリチウムイオン電池を搭載しなくても、CO2排出量とガソリン消費量を削減できるアイドリングストップ車。総合家電のパナソニックが“身近なエコカー”を縁の下で支えている。(南昇平)
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