お客様の目線・・・簡単なようで中々出来ないですよね。(~_~;)











 仕事柄、客観的かつニュートラルな観察をしたい私は、偽名や変装を駆使してザ・リッツ・カールトン大阪に宿泊しています(リッツのみなさん、ゴメンナサイ)。つまり、常連客やもちろんVIP扱いではなく、一見客として利用しているということです。そんな中から、うれしいエピソードの一部をご紹介します。



・エピソード1



 1泊の予定のところ、直前に連泊になってしまった時のこと。あいにく、宿泊予定の部屋は翌日以降、別客で埋まっているようです。そこで、単身での宿泊にもかかわらず、デラックスルームにクラスアップ! もちろん、料金はそのままです。



・エピソード2



 ある宿泊時、部屋に足裏マッサージをお願いしました。疲れて無口になっている私に、特に会話を投げかけることもなく、丹念に施術をしてくれました。



 所定の時間が終了になった時、「首・肩のお疲れが溜まっているようです。よろしければ20分ほどお身体も施術させていただきます」との申し出。もちろん料金はそのままです。



●お客さまの問題解決ができてこそ、ホスピタリティ



 ここで注目してほしいのは“料金そのまま”や“クラス・アップ”ではありません。「そのお客さまの問題解決を確実に実践している」ということです。



 リッツ・カールトンといえばクレド(信条)。そのクレドの中には「お客さまの特別な問題やニーズへの対応に(中略)必ずそれを受けとめ解決します」と記されています。



 クレド同様、サービスバリューズの中にも「私は、お客さまの願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします」「私は、お客さまの問題を自分のものとして受け止め、直ちに解決します」とあります。



 リッツ・カールトンに滞在すると「ホスピタリティとは、お得感や限定感、優越感、特別感などとは次元が違うのでは?」と痛感します。



 そう、お客さまの問題解決ができてこそ、ホスピタリティです。不便・不安・不快・不信・不具合・不明……お客さまの問題解決とは「不」を解消すること。お客さまの困っていることに目を向ければ、業種を問わずホスピタリティ実現に近付きそうです。



●そのプレゼンはお客さまの目線が抜けていませんか?



 以前、ある大手電機メーカーの営業職の方の顧客へのプレゼンを聞いてガッカリしたことがあります。「業界初」「開発に7年かけた」「国内初のシステム搭載」などと、商品の強みを説明していましたが、それらはお客さまの問題解決にはなっていません。



 お客さまの目線になれば、「業界初」は他社も追随するかもしれないから時期尚早……。「開発に7年かけた」はそんなに開発にかけたら単価はそれなりに高い設定かも……。「国内初のシステム搭載」は前例がないので動作が心配……かもしれません。



 例えば、「業界初」を「業界で最もコンパクトな製品が実現したので、オフィス内で場所をとりません」、「開発に7年かけた」を「顧客ニーズに応えるために、十分なマーケティングの裏付けがあります」、「国内初のシステム搭載」を「今までよりも処理能力が高いので、生産性に貢献できるシステムになっています」などと、お客さまの問題解決に繋がるアプローチがあれば、顧客の興味関心も前進することでしょう。



 ちなみに、ザ・リッツ・カールトン大阪でのエピソード2では帰り際、アンケート内にうれしかった事実を記載してチェックアウトしました。すると後日、支配人直筆の手紙をいただきました。その時、「もう偽名で宿泊するのはやめよう! そんな失礼なことはできない!」と心が強く動きました。



 お客さまの問題解決とさらにプラスアルファがあってこそ、真のホスピタリティであり、選ばれ認められる存在へとなるのです。しかも、それをどんな局面でも実践継続できることが顧客に支持され続け、組織が発展し続ける肝となります。(山岡仁美)