49景 王子不動之瀧 | 広重アナリーゼ~名所江戸百景の描かれた日~

広重アナリーゼ~名所江戸百景の描かれた日~

百景が描かれた時代背景、浮世絵の細部、安政地震からの復興を完全解説!

 景数  49景 
 題名  王子不動之瀧 
 改印  安政4年9月 
 落款  廣重畫 
 描かれた日(推定)  嘉永3年 

$広重アナリーゼ-王子不動之瀧


 江戸の研究家三田村鳶魚によると、江戸には自然の滝がなく、いずれも人工的であったという。王子には「王子七瀑」と呼ばれる7つの滝、すなわち名主の滝、大工の滝、不動の滝、稲荷の滝、権現の滝、見晴の滝、弁天の滝があった。このうち名主の滝は、当初の名主孫八が安政年間に作ったものなので、7つそろったのはちょうどこの絵の改印のころである。

 江戸の日暦によると、不動の滝は、泉流の滝ともいう。この滝のために正受院は滝不動と呼ばれる。高さは一丈余り、目黒不動の独鈷の滝よりは細いが、滝口が高いので水勢が強い。ここへ来るものは、滝に打たれて体を冷やす。近年は乱心、逆上、頭痛などを滝に打たれて治すことが流行している、と文化年間の記事に書いてある。

 この絵とほとんど同一の構図の絵が、絵本江戸土産4編にある。4編は嘉永3年に出版されていることが判明しているので、この絵は、絵本江戸土産からの焼き直しということになる。また肉筆画である天童コレクションにもある。江戸土産で滝に打たれている人は、前述した病気の治癒を目的にしていると思われる。

$広重アナリーゼ-絵本江戸土産 不動の滝
絵本江戸土産 不動の滝


 安政地震での被害を調べたが、記録がまったく見当たらなかった。江戸の郊外でもあり、台地であるこのあたりは、さしたる被害もなく記録されなかったと思われる。

 最後にこの絵が描かれた日の推測であるが、前述したように過去の作品の焼き直しということから、嘉永3年以前の絵ということになる。

このブログで参考にした本
江戸の日暦〈上〉 (1977年) (有楽選書〈14〉)
江戸の日暦〈下〉 (1977年) (有楽選書〈15〉)
もっと知りたい歌川広重―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)


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