皆さんいかがお過ごしでしょうか、ドラムのきっくです( ´_ゝ`)
みんなに最初に言っておきたいことがある。
俺は小学校6年生で両親と死別し、親戚中を転々とする生活を送っていた。
最後に渡ったのは群馬の遠い親戚で、彼らの先祖の資産相続争いで殺しあって、最後には山奥の屋敷が全焼する火事にまでなり、生き残ったのは高校生になる俺一人だった。
焼け跡からかき集めた少しのお金を持ち東京に向かったが、途中でお金も尽き、埼玉の大宮でホームレスをした。
ホームレスの中でも格差や階級があり、新入りの俺はもちろん疎外され、餌場を荒らそうものなら鉄パイプやホウキで殴られた。
ホームレスとはいえ皆生きるのに必死でアグレッシブだった。
そんな暮らしにも少しずつ慣れるもので、他のホームレスと会話もするようになってくると、ある人物の存在を知るようになった。
彼らはその人のことを「ヒーロー」と呼んでいた。
なんの仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、それは誰も知らないが、ギターを背負い、小汚ない俺達と同じ目線で話してくれる、時には差し入れを持ってきてくれて朝まで話を聞いてくれるんだそうだ。
ホームレスになる俺達なんてのは、何かと事情があるやつらばかりで、そんな人に言えないようなことも黙って朝まで聞いてくれる。仲間はそう話していた。
とんだ物好きも居るんだなと聞き流していた話だった。
ある日、いつものように自分の餌場で小銭を探していると、後ろから声を掛けられた。
振り向くと同時に背中に鈍痛が走る。
そして太ももを何度もサッカーボールキックされた。
俺はただ、頭だけをガードし丸まっていた。
激痛に意識が遠退いていく。
チンピラめ。くそっ。。。
気付くと、見知らぬ公園のベンチで寝ていた。
「気付いたか。」
あんた、誰だ、。
「袋叩きだったね、あれは敵わないよ。俺もとばっちり食らうかと思ったけど、あいつら意外と小心者だったから助かったよ、ハッハッハ」
この人が助けてくれたのか。。。ギターを持ってる。この人が、あの、、?
「まだ痛む?酒でも飲んで忘れようよ。で、君はどこから来たの?」
それから、俺は悲惨な過去をゆっくり話した。
この人の目には、人の心を開く力があるみたいだ。
自分の過去を話したのはこの時が初めてだった。
気付けば日は登り、体の痛みも忘れてしまっていた。
最後まで黙って聞いていた彼は、よしっと言って立ち上がり、おもむろにギターを持ってチューニングを始めた。
そして、それを奏で、歌った。
それは、俺の歌だった。
俺のすべてを表したような歌。
朝焼けの公園に響くコード、反響する歌声、俺は聴きながら体から湯気が出るのを感じた。
薄汚い心までも浄化していくような、それでいて鼓動に直接叩きつける音。
指先の血管にも血が流れているのがわかる気がした。
歌い終わった時、俺はなんでも出来るような気分になった。
こんなちっぽけな人間に、巨大なスポットライトをあててくれた。
「俺の名前はヒロ。君はまだ若い。楽器をやってみないか?君は、そうだな、ドラムスなんてどうだい?」
この日から俺はメンバーになった。
これから話すのは、そんな彼と俺が世界のバンドヒーローになるまでの物語。
つづく
次回『大宮ヒーロー列伝』
「大宮のガーデンで二人で10万負ける」の巻
みんなに最初に言っておきたいことがある。
俺は小学校6年生で両親と死別し、親戚中を転々とする生活を送っていた。
最後に渡ったのは群馬の遠い親戚で、彼らの先祖の資産相続争いで殺しあって、最後には山奥の屋敷が全焼する火事にまでなり、生き残ったのは高校生になる俺一人だった。
焼け跡からかき集めた少しのお金を持ち東京に向かったが、途中でお金も尽き、埼玉の大宮でホームレスをした。
ホームレスの中でも格差や階級があり、新入りの俺はもちろん疎外され、餌場を荒らそうものなら鉄パイプやホウキで殴られた。
ホームレスとはいえ皆生きるのに必死でアグレッシブだった。
そんな暮らしにも少しずつ慣れるもので、他のホームレスと会話もするようになってくると、ある人物の存在を知るようになった。
彼らはその人のことを「ヒーロー」と呼んでいた。
なんの仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、それは誰も知らないが、ギターを背負い、小汚ない俺達と同じ目線で話してくれる、時には差し入れを持ってきてくれて朝まで話を聞いてくれるんだそうだ。
ホームレスになる俺達なんてのは、何かと事情があるやつらばかりで、そんな人に言えないようなことも黙って朝まで聞いてくれる。仲間はそう話していた。
とんだ物好きも居るんだなと聞き流していた話だった。
ある日、いつものように自分の餌場で小銭を探していると、後ろから声を掛けられた。
振り向くと同時に背中に鈍痛が走る。
そして太ももを何度もサッカーボールキックされた。
俺はただ、頭だけをガードし丸まっていた。
激痛に意識が遠退いていく。
チンピラめ。くそっ。。。
気付くと、見知らぬ公園のベンチで寝ていた。
「気付いたか。」
あんた、誰だ、。
「袋叩きだったね、あれは敵わないよ。俺もとばっちり食らうかと思ったけど、あいつら意外と小心者だったから助かったよ、ハッハッハ」
この人が助けてくれたのか。。。ギターを持ってる。この人が、あの、、?
「まだ痛む?酒でも飲んで忘れようよ。で、君はどこから来たの?」
それから、俺は悲惨な過去をゆっくり話した。
この人の目には、人の心を開く力があるみたいだ。
自分の過去を話したのはこの時が初めてだった。
気付けば日は登り、体の痛みも忘れてしまっていた。
最後まで黙って聞いていた彼は、よしっと言って立ち上がり、おもむろにギターを持ってチューニングを始めた。
そして、それを奏で、歌った。
それは、俺の歌だった。
俺のすべてを表したような歌。
朝焼けの公園に響くコード、反響する歌声、俺は聴きながら体から湯気が出るのを感じた。
薄汚い心までも浄化していくような、それでいて鼓動に直接叩きつける音。
指先の血管にも血が流れているのがわかる気がした。
歌い終わった時、俺はなんでも出来るような気分になった。
こんなちっぽけな人間に、巨大なスポットライトをあててくれた。
「俺の名前はヒロ。君はまだ若い。楽器をやってみないか?君は、そうだな、ドラムスなんてどうだい?」
この日から俺はメンバーになった。
これから話すのは、そんな彼と俺が世界のバンドヒーローになるまでの物語。
つづく
次回『大宮ヒーロー列伝』
「大宮のガーデンで二人で10万負ける」の巻