1995年5月15日 ビクターよりリリース


実はこれ、新品と中古持ってます。
あれです。コーラン問題で回収された初回と、コーラン抜いたやつと。
何はともあれ、全体の感想から。
暗黒三部作最後のアルバムでございます。曲は全体的にハードロックですよね。
なのに、歌詞がかなり暗い。だからなのか、えらい重圧を感じてしまいます。
んー・・・ただ、暗い中にも一縷の望みというか、一筋の光を見いだせる内容だと思います。
自虐しまくって、結局開き直っちゃってる感がものすごくしますが。
では、曲毎に感想参ります。


Loop
「感謝したい」からスタートする…リーディング?なんですが、あの、初めて聴いた時、櫻井さんのセクシー低音に耐性のなかった私(当時多分高校生)はこれを速攻で飛ばした記憶があります。
同じ理由で「Somewhere Nowhere」もスキップしてます。
歌詞カードには「感謝したい~あなたに」までしか記載されてはいませんが、その後の詩の、希望に満ちてんだか絶望し尽して死のうとしてるんだか分からないローテンションさに慄きます。
ただ、悲壮感は無いですよね。会った事の無い「愛しい人」に対するラブレター…なのかもしれません。
それとも、もしかしたら、もうあの世に行っちゃって生まれ変わろうとしているのかもしれない。
「今ここに~」の部分が、なんとなく、この世とあの世の境目の様な気がしてならないんですよね。
…三途の川か?


love letter
かっこいいです。イントロといい曲といい歌といい。
Loop」を櫻井さんの恋文(ん~ちょっと違うよなあ…)とするなら、こちらが今井さん流恋文ってとこですか?
でも、これってほんとに「love letter」なんでしょうか?
私の訳し方がおかしいんかもしれませんが。
あなたの犬(みたい)になりたい…って所がそうなのかしら?


君のヴァニラ
エロス…。結構単刀直入な歌だと思われるのですが、いかがなもんでしょうか。
にしても、このアルバムの櫻井さんは色々な歌い方をしてますよね。
この曲、聞いた話によれば、カラオケでこちらのバージョンを櫻井さんの真似をして歌うと一発で喉がダメになるとか。
すごい破壊力だ…。
カップリングバージョンの方が、櫻井さんのエロい低音が際立って一層イカガワシイ雰囲気になってます。


鼓動
はじめ、この曲の良さが分かりませんでした。
初めて聞いた時。高校生の頃かと思いますが、スキップしてた記憶があります。この曲も。
今ではとても好きな曲の一つです。
何と言えば良いのか。歳を重ねるにつれ、私たちは様々な経験をしていきます。
その経験とは、それを経験してから後になって初めて分かるもので。
それらが何を意味していたのか。後になってから分かる。
言葉には表せなくても、積み重なっていく何かがある。
その「何か」に響く曲だなと、私は思います。
何を言っているのやら。
歌詞は、なんていうか人間賛歌といった風情なんですが、根底には悲しみが溢れているように思います。
ごめんなさい 
ありがとう
悲しい事は何もない

泣きたくなる曲です。


限りなく鼠
すごいタイトルですよね~。「鼠」と断定せず「限りなく」をつけるセンス。恐ろしい。
これは櫻井さん自身の幼少期に対して歌ってるんでしょうか。
甘い顔の。可愛い顔の少年とは。
にしても、一番最後の、歌詞に載ってない「笑え笑え 笑うんだ」に強い絶望感を感じるのは私だけなんでしょうか?
「泣いて逃げてもダメ」「吐いて捨ててもダメ」ならば笑うしかない。だから「笑うんだ」と。
ただ、この「笑うんだ」にはすごい緊迫感を感じます。
怖い曲です。期限切れまで怯え続けるなんて…ねえ?


楽園(祈り 希い)
問題曲…なんですかね?何がいけなかったんでしょうか。コーランを使う事その物でしょうか?
この事件。新聞にも結構大きく書いてましたよね。
未だに覚えています。
「殺シ」バージョンの「JUPITER」にはグレゴリオ聖歌が使われていましたが、何のお咎めもなし。
片やコーランの場合は、それが逆回転であっても使用不可。
宗教の方向性だけでこんな事になるんでしょうかね?
やっぱり、宗教観の違いなんでしょうか?
長くなりました。曲の話。個人的にはハードアレンジの方が好きです。
今の世の中、この歌詞の様になってきたと思いませんか?
大きな事から小さな事まで、「私」は知らん顔をしてここにいます。


細い線
もう、ほんとどうしようもなくなってくると口ずさんでしまいます。
はい。サビを。
開き直るのって、ほんとは辛い事だと思うのです。
この歌うたいさん。食べていく為だけに歌うのよ~と歌っております。
そんな開き直り、今は恥ずかしいと思ってくれてると嬉しい。
もしかしたら、いまだにそう思っているのかもしれませんが。


Somewhere Nowhere
これのビデオクリップをご覧になった事、ございますか?
私、「こっちだあああ!」の所で「Death」に行ったらどうしようかとはらはらしつつ(そうなったら爆笑するつもりで)見てました。
途中、日本語おかしくなるところがありましたよね・・・?


相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き
随分文学的。
曲がたまらなく好きです。
もちろん今井さんのとこもですが。
歌詞は…今井式ムーブメント図解…伝わりにくいですかね。
あの、これは私がなんとなく思った事なんですが、当時のバンドブームに対する批判…というか皮肉みたいな感じを受けました。
何て言えばいいのかな。社会にも言えることなんですが、「群れないで独自にやるぜ」っていう。
そんな深い詩では無いとは思いますが、どちらにしろ、雑魚=今井さんもしくはBUCK-TICKだと思っています。


デタラメ野郎
「睡眠薬をバーボンで」飲んではいけません!
ガデムモーターって何でしょうか?ガッデムっていうスラングがありますが、それと掛けてる?
黄色い泉…あの世の事を黄泉の国って言いますが、そこにいかせてくれと?
もう、櫻井さんの当時の心境が如実に表れている曲ですよね。
でも、笑ったりなんかしませんよ。


密室
大好きな曲です。下手すると、一番好き…かもしれません。
高校生の時からずっと好きな曲です。意味はわかりませんでしたが、ずいぶんと物悲しい曲だなと思いながら、でもきれいな曲だから、当時から好きだったんかな?と、思っております。
密室というタイトルから連想するに、監禁の曲なんかな?と思っていたんですが、今では心の中の事なんじゃないかな~と漠然とですが思っております。
しかも、一方的な自分の想いだけを歌っているので、やるせないというより狂気に近いイメージがあって怖いな。
でも歌うのが櫻井さんなので、櫻井さんになら閉じ込められたいわと思う人が多いと思います。
私がそうなんですが。
さて、私がこの歌を監禁の歌では無いと思ったのには訳があります。
「君を触りたい」、「君を奪いたい」、「君を閉じ込めておきたい」。
全部願望なんですよね。
「だから此処にいて」もそうですが。
もし、「君」を監禁しているのなら、「ここには望むものはない」、「ああ何も何もない」とは出てこないと思います。
例えば、「君を閉じ込めておきたい」の後は、「この胸にずっと」と続きますよね。
願望だらけで、何もない「ここ」に「君」がいれば、「何も望まない」。
「ここ」。もしくは「此処」。
「密室」とは、「僕」の心の中だと思うのですが。


Kick(大地を蹴る男)
始めは全ての音が遠い所から聞こえてくるような感じです。
で、「終わりなき愛のチューリップ」の所で生っぽい音になります。
この曲が、一番「死」を感じさせる曲だと思います。
大地を蹴って宙に舞う事は、すなわち高い所から飛び降りる事。
もしかしたら精神の話かもしれませんが。
ただ、とても抽象的な言葉が多いので、自分なりにこんなんじゃないのかなというのを書いてみます。
怖い夢→現実
終わりなき愛のチューリップ→あの世もしくは苦痛の無い場所
大河→単純に三途の川だと思うが「星」「宇宙」が出てくるからそうじゃないんかも
血まみれの愛の中→子宮もしくは安らげる場所
光る地獄→この世
闇の真実→死
私、脳みそないんだなあ…。


愛しのロック・スター
ISSAYさんとのデュエットですが、聞き分けが出来るようになるまでに結構時間がかかりました。
曲は可愛い感じがするんですが、また詩が自虐だらけですよ。
この曲のPV、切ないよう…。
というか、当時のファンは何も言わんかったんかな…。
かつて、評論家の市川さんと言う人が、「ミッドナイト・ロックシティ」という番組のパーソナリティをされていた事がありました。
櫻井さんもゲストで出ていらしたんですが、ファンの方からこの曲について質問(というか詰問)があった時に、「悪い意味では無い」と言うような事をおっしゃっていたようです。



神が降りてきてタイトルが変わったby櫻井敦司
この曲、かっこいい。
どっちかといえば、シングル盤のドラムから始まるパターンの方が好きです。
櫻井さんの声と今井さんの声の対比が素晴らしいです。
リフがかっこいいです。
詞については、なんか肉感的ですよね。
いや、「肉」って単語が出てくるからじゃないですよ?
生きていたいな、と思う曲です。ただひたすら生きようと。
でも、一見ポジティブに見えて実際そうじゃないのが櫻井さん。
ストレートに「俺は生きたいんだ」とは言えず、迷っているのが櫻井さん。
今は、もう思ってないでしょうが、当時は迷っていたんでしょうね。


見えない物を見ようとする誤解 すべて誤解だ
こんなタイトル見た事ないよ、お母さん!
シングル盤よりこっちの方が好きです、歌詞が。
なんで好きかと言えば、こっちの方が、あからさまに暗い…というか、痛いからです。
タイトルに則しているのはシングル盤だと思います。
共通項は、
真実を知るには 此処にいても見えない
真実を知るなら 此処にいてはいけない

なんですが、アルバムの場合は「俺」の話。
シングルの場合は、「僕」と「君」の話。
櫻井さん、よく一人称がコロコロ変わりますが、ここに意味は無いと私は思っております。(意味がある場合もありそうですが…「道化師A」とか)
二人称もよく変わりますけど。
で、なにが言いたいのかと言うと、アルバムの場合、「俺」が受けた傷や心の歪みを歌っていると思うんです。
シングルは、正体不明の「君」と「僕」が、真実を知りたいと思って狂っていく。そして、自分自身の境遇に対して開き直っている。
もちろん、狂うのは額面通り「狂う」のではなく、パブリックイメージが変わっていく事ではないのかな、と。
「君」が何者なのかを考える事で、話は色々変わってくるでしょうが。
というか、考える余地がある辺りにこの曲の冷たい空気感を感じます。
アルバムバージョンは結構分かりやすいんですが、シングルバージョンは分かりにくい。
どちらにしても、きっと「誤解」なんでしょうね。
何故ならば、歌詞は見えるものですが、その裏に隠れている「真実」は目に見えない物だからです。
そんなものを、ああでもないこうでもないと考えて櫻井さんの中にある「真実」が見えると思っている事こそが、「誤解」なんだと。