1991年2月21日 ビクターよりリリース
前作「悪の華」から1年。
長いツアーがありました。
夏に、野外でライブもしてました。
そして、避けては通れない不幸な出来事があり、出来上がったアルバムです。
このアルバムの完成により、BUCK-TICKのその後が決定付けられたと言っても過言ではないと思います。
演奏技術の向上ですとか、櫻井さんの歌唱力の向上ですとか詞の作り方ですとか、挙げればキリが無い位様々な変化があります。
恐らくは、長かったツアーの賜物なのではないかなと思うのですがいかがでしょうか?
エポックメイクなアルバムです。
そして、勝手に言ってるんですが、(詞が)暗黒三部作の第一作目です。
では、一曲毎に感想を書かせて下さい。
スピード
もう、伏字の所に関しては有名な話なので割愛します。
この曲は、アルバム一曲目にして一番明るい曲です。タイトル通り、スピード感があります。
詞に関しては、「ダイブするのさ」「自爆しよう」の箇所を見ると、飛び降り自殺っぽいイメージがありますが、実際は違うような気がします。
なぜなら、飛び降りたのなら一番最後の歌詞の意味が繋がらないから…なんですが、如何でしょ?
飛び降りたのに、「目覚めは今日も冷たい」ってならないんじゃないかと。
歌詞の中に出てくる、「今夜」と「今宵」は当たり前なんですが、「摩天楼」も夜をさす言葉なんじゃないでしたっけ?
だから私の解釈は、クスリをキメてビルから飛び降りようとかじゃなくて、今までの自分を脱ぎ捨てろって事じゃないのかな~と。
そうすると、「イカレタノハ~」の辻褄が合わないじゃないかこらー!!!
にしても、この、「女の子 男の子」って…ねえ?
しかし、思い出すのはPVの今井さんのタコ踊りとワンレンでノリノリな星野さん。
MACHINE
スピード感を一番感じますね、「スピード」よりも。
ワンコーラス目の時点では、櫻井さんは超低音で歌ってますけど、ツーコーラス目で突然1オクターブ上げて歌うじゃないですか。
そこがもう、シビレルよ…。
もう、そこで一気に加速する感じですよね。
信じるものは夢じゃない 走り出すこの俺だけさ
イイ。
この曲は、もしかすると「スピード」と繋がってんのかもしれないですね。
イントロの入り方とかも、凄いカッコイイです。
MY FUNNY VALENTINE
あ、あだるてぃ~…。
この曲と、「エンジェルフィッシュ」は今作のアダルト部門の双璧だと思います。
作曲者がそれぞれ違うというのも、とても面白いですね。
こちらは今井さんの作品ですが、反復ビートって言うんですかね?
ほぼ一緒のテーマを、途中転調を加えつつ、でもやっぱりテーマに若干戻りつつっていう。
凄く面白い曲ですよね。
詞は、…一部意味不明な箇所がありまして。
ソウ美シイ君ヲ 二度ト眠ラセル
って言う所です。
分かりますか?「二度と」って言う言葉の後に続くのは、たいてい「~しない、させない」だと思うんですよね。
まあ、もしかすると、「眠らせる」=「目覚めさせない」って事なのかもしれませんね。
変身[REBORN]
好きですよ、このスピード感といいハードさといい。
「REBORN」って再生っていう意味ですよね。生まれ変わるとも言いますが。
もう、何て言ったらいいのか。自分を見世物と感じているのがありありと分かる歌ですね。
上等な見世物でありながら、無力だという自分をって事なのでしょうか。
深い意味はなさそうなんで、「お前」っていうのは特定の誰か、では無いのでしょうね。
でも、じゃあ「あなた」は誰なんでしょうかね?
エンジェルフィッシュ
星野さん版アダルティ。
タンゴっぽいです。
「ちょっと抱いて」が最高にいやらしいですね。
もちろん、サビにくる「ちょっと噛んで」が本気でやらしいですが。かすれた声と相まって。
でも、この曲。
「噛んで」「抱いて」「イカせておくれ」以外の歌詞は、とても悲しい感じがします。
だって、「囁きは嘘」で「話すことがない」んですからね。
溺れる所っていうのは、悲しみか愛情か。
悲しみだと「沈む」か「暮れる」かなんですが、愛情だとだいたい「溺れ」ますよね。
多分、愛情に溺れて悲しみに沈んでいくって事なんでしょうかね?
そんな感情の湖に溺れて沈んでいく二人を「エンジェルフィッシュ」に見立てたんでしょうね。
JUPITER
これは、文句なくBUCK-TICKでもトップを争う名曲ですよね。
ワンコーラス分、星野さんの十二弦アコースティックギターとバックコーラスと櫻井さんの声だけ。
で、「今夜も~」の辺りからリズム隊と今井さんが加わるという形なんですが、もう、この辺りで鳥肌と涙が。
詞については、何も書けないです。
それは、「さくら」「太陽ニ殺サレタ」にしても同様です。
ただ、「さくら」のほうが、もっと櫻井さんの心情をダイレクトに感じますね。
さくら
この曲は、たまたま今井さんが出来上がった曲に名前を付けたのか、それとも「さくら」から連想してこの曲になったのかは定かではありません。
日本音階って書くとかなり変ですが、日本的。
ギターソロのあたりが、散っていく桜の花弁の様な雰囲気を感じました。
もう、この曲にあるのは「後悔」と「喪った悲しみ」なんですよね。
「もう一度」は無いと分かってはいるのでしょうが…。やりきれないです。
Brain,Whisper,Head,Hate is noise
このアルバム唯一の今井ワールド炸裂曲ですね。
意味が全く分かりませんが、噂によると、今井さんはこの歌詞の光景を「見た」とか。
どうやって?なんて野暮な事は聞きませんが。
好きなのは、「開け進化のMode」ですね。
これを今井さんが言っているのがまた…!カッコいいんですよ!
だって、ほんとに「開け」ちゃったんですからね。
MAD
もうこの曲からの流れが最高にイイですよ。
吹っ飛びますよ、いろんな事が。
落ちてる時に聞いたら、どん底になっちゃいますが。
曲は、ほんとテクノっぽい。リズムが特にそう感じられます。
なのに、詞の初っ端が「僕は狂っていた」なんですからね。
さて、この曲の詞。
読めば読むほどずどーんとなってしまうんですが、気になる詞がありました。
赤い海の底で溺れる夢を見る
なんですが、心理学か夢占いか忘れましたけど、「赤い海」とは「子宮」を表すのだそうで。
本当に見たのか、それともわざわざ調べたのかは定かではありませんが、どちらにしろ…。
「子守唄」も出て来ますしね。
「もう二度と会えない」わけですし。
地下室のメロディー
好きです。
もう、全てカタカナ表記なのが、より一層狂気と正気を彷徨い逃げ惑う歌の中の人物の焦燥を浮き彫りにしますね。
そう。
カタカナ表記であるがゆえに分かり辛い箇所もあります。
キミガワルイ
ですね。果たして、
「気味が悪い」
のか、
「君が悪い」
のか、はたまた
「黄身が悪い」
のか。
普通なら、「気味が悪い」ですよね?「アワレムヨウニミルナヨ」って言ってるんですから。
その視線に対して「気味が悪い」んだな、と。
では、「君が悪い」ならば?
詞の中にも「オマエ」が出て来ますからね。
でも、唐突ですよね?
じゃあ、「黄身が悪い」では?
それだと、「ああ、『マヒルニコゴエ』るのも『ハキケニフルエ』るのも仕方ないよね。あたったんだもんね」ってなってえらく間抜けになっちゃいますもんね。
曲は、もう、シンセドラムとか好きなんでもう叫びたいくらいカッコいい。
随所に使われる打ち込みのコーラスの様な音も良いですよね。
そういえば、今作で「地下」が二回出てきますね。
彼の言う「地下」って何の象徴なのでしょうか?
ツメタイチカシツ
地下の加護の中
もしかして、「変身」とこの曲の「俺(オレ)」は同一…なんでしょうねって、書いてる人一緒ですしね。
じゃあ、多分「あなた」も「お前」も「オマエ」も同一人物でしょうか?
私は、そうだと思います。
太陽ニ殺サレタ
イントロの鐘の音。
あれは、今井さんのギターの音ですよね?
静かで、厳かな。
詞の冒頭の、
夜の舞台 幕が上がる
にぴったりなイントロです。
この詞。後の「キラメキの中で…」に通じるものがありますね。
「死化粧」がはがれ落ちるのと、「化粧」のとれた僕。
双方「裸」であり、片や「舞台の上」、片や「舞台の中」。
ただ違うのは、「キラメキの中で…」に登場する「ケロイドの僕」は、見世物である自分自身の価値観に苛まれている様に感じます。
しかし、この曲の「立ち上がれない 動けもしない 俺」は、「さよなら」を言えなかったが故に、悲しみに苛まれているような感じです。
もしかしたら、リンクしてるかもしれないですね。
「キラメキの中で…」は、次のアルバムの一曲目ですからね。
しかし、「サヨナラヲ言ウ前ニ」という詞が悲しくて堪らないです。
たしか、ライヴではこの続きがありますよね?
「太陽 どうぞ僕を 俺を このまま溶かしておくれ」
でしたか?消して、かもしれませんし、どうか、だったかもしれません。
確認した結果、「このまま溶かしてほしい」でした。
どちらにしろ、悲痛としか言いようが無いですよね。
太陽は、けして普遍的な存在では無いとは思います。
しかし、この歌の中では絶対的な存在であり、それに奪われてしまう無力さというのは、きっと何物にも代えられない悲しみとなります。
人々にとって絶対的なものとは?
それは、人だけでなく、存在するもの全てにおいてですが絶対というものが存在します。
生まれたら、死ぬ。
「死」。
「終わり」です。
それに対する無力を感じる時、悲しいだけではすまされないですよね。