釘隠しもその一つと言えるでしょう。
釘隠しは、柱と長押が交差する部分に打ちとめた大きい釘の頭が表面に見えないようにかぶせる装飾品です。
それぞれに意味があり、その部屋に合わせたものが取りつけられています。

▲玄関の間の釘隠しは菊菱。幕府のお偉方や高貴な方々の滞在する部屋には菊、なんですね。天皇家の家紋も菊ですし。菊には中国に長寿の伝説があるそうです。中国の南陽にある甘谷に、菊の群生地があり、そこに流れる沢の水を飲むと長寿を得られるとか。

▲市村鉄之助が匿われていた部屋は逆さ蝙蝠の釘隠し。中国語では蝙蝠の「蝠」と「福」の音が同じことから福の象徴とされているそうです。福は自由奔放なので、逃さないように逆さにして留め置くのだとか。なので、逆さになっているんですね。

▲彦五郎ご夫妻のお部屋はつがい兎。
兎は多産なので、子宝に恵まれて家が繁栄するようにとの意味があるそうです。
また、兎とよく組み合わされる「波文」からの連想で火災除けの意味もあるとか。
大火の後に十年もかけて建てられていますから、そのような願いも込められていたかもしれませんね。
兎は長い耳を持っていますから、そこからの連想で、「聞き耳を立てる」=他人の言葉に耳を傾けるという意味もあるそうです。
彦五郎は日野宿の名主でありましたから、民意によく耳を傾け、善政を行うという心構えを表していたのかもしれません。
この釘隠しはつがいなので、夫婦円満・子孫繁栄の意味あいが濃いと思いますが。

▲廊下には瓢箪が。昔、瓢箪池というのがここにあったそうなのですが、上段の間を有山家に移築した際、埋められてしまったそうです。それを残念に思った大工さんが、床に瓢箪の模様を埋め込むような細工をして、この側の柱に鯉の彫刻を施したそうです。
写真は撮っていませんが、確かに鯉の彫刻がありました。

▲狆潜り。床と床脇を仕切る壁の下方に設けられた小さな開口部をそう呼びます。書院から取り込んだ光を違い棚の下側の奥まで届かせる工夫です。光もインテリアの一部なんですね。こちらから見ると、模様が見えます。桐の花でしょうか。
あ、欄間には四季の花々が透かし彫りになっているのですが、大工さんのミスで、秋冬のお花の順序が逆になってしまっていますが、そんなところも味わいです。
他にも小さな驚きと工夫が沢山あるかもしれませんが、本日はこのあたりにて。