例えば、大企業のビルには警備員がいる。

彼らは、ビルの出入り口はもちろんのこと、各部署から社長室、

さらには金庫室(があれば)の鍵まで預けられている。

侵入者からビルを守り、

その企業に事故や事件が起こらぬよう、目を光らせているわけである。

それが警備員、すなわち「番人」の仕事だ。

 

ところが、警備員の中に、大きく勘違いしてしまった者が出現したとしよう。

警備員は、企業の心臓部にまで入れる鍵を預けられているのであるが、

勘違いした警備員は、それらの鍵を「預けられている」のではなく、

「自分が所有している」と勘違いしてしまったわけである。

勘違いした警備員、すなわち「番人」は、どこにでも出入りできる鍵を「所有」しているため、

ビルにあるすべての財産を、まるで自分の好きに扱えるものと勘違いしてしまったわけである。

 

その番人は、預けられた鍵を、自分の者のように扱い始める。

それも、享楽を目的として。

 

この場合、このビル(企業)は、どうなってしまうのであろうか。

早期にこの番人(警備員)の悪事に気づけば、傷も浅いうちに済みそうだが、

もしも最後まで気づかなかったとすれば、この企業は倒産するであろう。

 

 

 

さて、問題を地球に立て直そう。

 

神か仏か、天か妖魔か、一体誰によるものか分からないが、

地球に生まれた人間には、五本の指と、火を扱う知恵と、情報を伝達できる言葉とが与えられた。

文明が発達するにつれ、五本の指と火と言葉をもって、

人間は天空を飛びまい、地中や水中を自由に行き来することができるようになった。

これは恐らく、宇宙を創生した者が、この地球の番人として人間を誕生させたのではなかろうか。

五本の指と火と言葉をもって、人間は地球の金庫室にまで入れる権限を手にいれたわけである。

地球に事件や事故が起こらぬよう、それを守る番人だからこそ、与えられた特権なのである。

 

ところが人間たちが、この特権を、まるで自分らの力による自分らのもの、と勘違いしてしまったとしよう。

健全な地球の活動を保持させるために与えられた権限を、利己的に使い始めてしまったのだ。

 

番人が、番人である立場や分際を忘れ、勘違いし、番人の権限を悪用して、

享楽的に降るまったとすれば、地球はどうなってしまうのか。

倒産である。