平成になってから、とにかく法網が細かくなった。
メディアを騒がす事件が起きると、すぐに国会で新たな法案が提案され可決する。
代議士たちが、選挙活動を有利にするためにやっている愚策である。
昭和の時代には、
「今は政治家はいない、いるのは政治屋ばかりだ」
という言い回しがあり、これが的を射ていると言われた。
しかし私は思う。平成からこっち、
「今は政治屋すらいない、いるのは選挙屋ばかりだ」
選挙に勝ちたいがばかりに、メディアに迎合した活動ばかりする。
だから、メディアを賑わす事件が起きると、それを「解決した」と言わんがばかりに、新たな法律を作る。
どんどん法律を作る。法網を細かにしているということだ。
古代、かの思想家「老子」はいった。
「法網を細かくして国を統治しようとすると、民は法網の隙間ばかり狙い恥を忘れてしまう。
しかし、君主が德をもって統治すると、民は恥を知り、德のある国家になる」
さて、安倍さん、今はどうだろうか?
数年前、えびすやとかいう焼肉店が集団食中毒を起こした。
たしか十数人亡くなってしまったのではなかったかと記憶する。
その直後、当時の政権民主党は、レバ刺し禁止の法律を作った。
もうこれは、徳川綱吉のお犬様と何ら変わりない。
迎合主義の果て。愚の骨頂だ。
では、なぜこの食中毒が起こったのか考えてみよう。
原因はズバリ、デフレにあるものと考えられる。
とにかく安く料理を出そうとした挙句、牛モモの赤身を「ユッケ」として出したのである。
もともと、ユッケ肉には、牛の一本背ロースが適している。しかし背ロースは高価だ。
だから、えびすやは似たような赤身のモモ肉(部位でいうとシンタマという)を出した。
シンタマは刺身で出してはいけない肉だ。よほど新鮮でなければ危険だ。
食中毒の原因はこれだけでない。
私は、えびすや事件の真の原因は、精肉屋にあったと考えている。
恐らく、胃腸などモツ肉を捌いたまな板をきちんと消毒しないまま、シンタマを捌いたのだと思う。
本当の原因は、精肉屋のまな板にあったと思われる。
いずれにしても、「安く」売ろうとした結果、こういうお粗末な事件が起こった。
当時の政府は、食肉事情をきちんと把握することもせず、ただただなま肉を禁止した。
レバ刺し、ユッケ、禁止。と。
では、現在はどうなっているだろうか。
「さくらユッケ」という商品が出回っている。
つまり、法が「牛刺」を禁止したため、店側は「馬刺し」を出し始めたのである。
では今度は政府は「馬刺し」を禁止しなければならない。
馬刺しがダメになれば、店側は次に別の動物の刺身を出してくるかもしれない。
こうして、法網を細かくしても、抜け穴を見つけられてしまうのである。
では、どうしたら良いのだろうか。
答えは意外なところにある。
「許してコントロール」するのである。
例えば、牛刺し禁止!と謳えば、さらに店側はやりにくくなる。
デフレ(価格が下がる)が原因で起きた食中毒、つまり景気の悪さが原因なのだ。
そこに禁止事項を増やせば、さらに景気は悪くなる。
牛肉禁止は、景気の悪さを増幅するだけの愚策なのである。
私が君主なら、フグ料理の免許のように、四つ足肉の刺身については免許制にしたい。
免許を出す、つまり免許を持った者であれば扱えるわけである。
免許を持った者は、そのプライドにかけて(せっかく取得した免許も失いたくないし)事故を避ける。
丁寧な仕事をすれば、食中毒はなかなか起こらないのである。
また、免許制には別の利点もある。
いたずらに価格を下げなくてもよくなるのだ。
デフレにあぐらをかいた大衆が、安価で獣肉の刺身を食べられると勘違いしたのだ。
獣肉の刺身など、安く食べられるものではない。
そこで免許制。
こうすれば、徒らに安くなることはない。
フグ屋が安くならないのと同じだ。
大衆側にしても、食べたい者は、それなりの対価を支払う必要があることを知る。
料理にある程度の価格がつけば、それこそ景気対策になるというものだ。
政治家たちは、こういう物の考え方をしなければならない。
いい加減、お犬様政治はやめて頂きたい。