恋のかけら・4
もし仮に俺が無事就職したとして、
「この企画は君に任せる」だの言われたら俺は間違いなくやる気がなくなるだろう。
普通に、適当に毎日過ごしていたい。
誰に流されたっていい。
俺は日々別に何を望むわけでもない。
ああ、ただ死ぬのはやだな。まだ若いし。
痛いのも勘弁だし、必死なのも疲れる。
ただもし死ぬなら眠ってる時がいい。
まあ俺はそんな人間だ。
けど別に目上に対する態度も弁えてるつもりだし、周囲に気を遣うことだって一応出来てると思う。
適当感を全面に押し出して行動したことはない。
考えは人それぞれだと思うし押し付けるつもりもない。
自分で言うのもなんだが、ダチも多いし女も勝手に寄ってくる。
―…ただ、俺の恋が叶ったことはないんだけど。
寧ろ、向こうから声かけてくる時点で俺ん中ではアウト。
可愛いなとかそういう感情なら少しはあるけど、基本来る者拒まず去る者追わず。
恋が叶ったことない、っていっても別に大して気にもしてなかった。
まあ叶うわけねえしな。
―…俺は、俺じゃない奴に片思いしてる子が好きなんだ。
今は、同じ店で働いてる白石さんっていう少し年上の先輩。
鋭いっつうか、真面目っつうか。
俺、一応店では「僕」なんて使い分けてんだけど、すぐバレたのがきっかけかな。
『止めたら?その、僕っての』
『、え…』
『なんか似合わないよ』
『あはは、すみません』
『あ…、ごめん違うの。使い分けても疲れない人だっているよね、でしゃばってごめん』
『……、』
そして俺が何を返していいか迷ってるうちに、どんどん会話が減ってしまった。
話したかったのに。
俺は馬鹿だ。
『僕、白石さん苦手です』
―…本当に馬鹿だ。
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