3番目に買ったアルバムと、“帝王”の死
マイルス・デイビスが亡くなったとき、私は高校生だった。
今でも覚えているのは、日曜のお昼前のニュースで、『マイルスが亡くなった』と報じていたことだ。映像は、焼酎メーカーの宣伝に出た際のものだったように記憶している。
実はその時点では、私はマイルスをそれほどよくは知らなかった(今では正規版アルバムで聴いていないものはないくらいなのだが)。亡くなったときに持っていた唯一のマイルスのアルバムがこれだった。
You’re Under Arrest/Miles Davis

¥1,000
Amazon.co.jp
このアルバムは、前に挙げた2枚(3枚)のアルバムの次に買ったもののはずだ。岩浪洋三氏のガイドブックに載っていたから買ったのだが、なぜ名盤とされる「カインド・オブ・ブルー」ではなく、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」でもなく、いきなりこれを購入したのかは、残念ながら全く覚えていない。
覚えているのは、前回CDを購入した怪しげな店ではなく、地元の市街地にある比較的大きな輸入盤専門店で手に入れたことだ。CDがやたらと過剰包装だった(覚えていますか? 輸入盤って昔はそうでしたよね)ことだ。
その日一日はこのアルバムを、追悼の意味を込めてずっと流していた。流しながら「このアルバムはあまり追悼にはふさわしくないな。やっぱりアコースティックな、もっとジャズらしいアルバムの方がよかったな。」と思っていたように記憶している。
だが、今はむしろこのアルバムはとても“マイルスらしいアルバム”だったと思っている。なぜなら、いかにマイルスが新しい音楽に向かって挑戦し続けていたかが、とてもよく出ているアルバムだと思うからだ。
出だしの1曲目は、なんと“ラップ”で始まる。もちろん今のエミネムや50centのような重いものではなく、80年代らしい、軽めの“ラップ”だ。
それにしても。マイルスのトランペットの音は、どんな音楽にもしっくりと合うのだな、と思ってしまう(もしかしたら演歌にもあってたかも?)。
ラップはこの1曲だけで、あとはほとんどがジャズ・ファンクだ。今聴くと、これらのシンセ使いまくりのファンクは、少し古臭く感じる。
しかし、「タイム・アフター・タイム」である。この1曲だけで、このアルバムは永遠に残っていくと思う。
マイルスが、いかに美しいメロディーを、自らの“声”で、いかに美しく“歌う”ことができたのかを、身体で感じることができる1曲だからだ。
40年代から91年に亡くなるまでマイルスが一貫していたこと。それはたとえ音楽が新しくなっても、楽器がエレクトリックになっても、リズムが変わっても、コードが複雑になっても、お金持ちになっても、「帝王」と呼ばれるようになっても、どのようにして音楽をかっこよく・美しく人に伝えられるかを、絶えず追求していたことだと私は思う。
今でも覚えているのは、日曜のお昼前のニュースで、『マイルスが亡くなった』と報じていたことだ。映像は、焼酎メーカーの宣伝に出た際のものだったように記憶している。
実はその時点では、私はマイルスをそれほどよくは知らなかった(今では正規版アルバムで聴いていないものはないくらいなのだが)。亡くなったときに持っていた唯一のマイルスのアルバムがこれだった。
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このアルバムは、前に挙げた2枚(3枚)のアルバムの次に買ったもののはずだ。岩浪洋三氏のガイドブックに載っていたから買ったのだが、なぜ名盤とされる「カインド・オブ・ブルー」ではなく、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」でもなく、いきなりこれを購入したのかは、残念ながら全く覚えていない。
覚えているのは、前回CDを購入した怪しげな店ではなく、地元の市街地にある比較的大きな輸入盤専門店で手に入れたことだ。CDがやたらと過剰包装だった(覚えていますか? 輸入盤って昔はそうでしたよね)ことだ。
その日一日はこのアルバムを、追悼の意味を込めてずっと流していた。流しながら「このアルバムはあまり追悼にはふさわしくないな。やっぱりアコースティックな、もっとジャズらしいアルバムの方がよかったな。」と思っていたように記憶している。
だが、今はむしろこのアルバムはとても“マイルスらしいアルバム”だったと思っている。なぜなら、いかにマイルスが新しい音楽に向かって挑戦し続けていたかが、とてもよく出ているアルバムだと思うからだ。
出だしの1曲目は、なんと“ラップ”で始まる。もちろん今のエミネムや50centのような重いものではなく、80年代らしい、軽めの“ラップ”だ。
それにしても。マイルスのトランペットの音は、どんな音楽にもしっくりと合うのだな、と思ってしまう(もしかしたら演歌にもあってたかも?)。
ラップはこの1曲だけで、あとはほとんどがジャズ・ファンクだ。今聴くと、これらのシンセ使いまくりのファンクは、少し古臭く感じる。
しかし、「タイム・アフター・タイム」である。この1曲だけで、このアルバムは永遠に残っていくと思う。
マイルスが、いかに美しいメロディーを、自らの“声”で、いかに美しく“歌う”ことができたのかを、身体で感じることができる1曲だからだ。
40年代から91年に亡くなるまでマイルスが一貫していたこと。それはたとえ音楽が新しくなっても、楽器がエレクトリックになっても、リズムが変わっても、コードが複雑になっても、お金持ちになっても、「帝王」と呼ばれるようになっても、どのようにして音楽をかっこよく・美しく人に伝えられるかを、絶えず追求していたことだと私は思う。