宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を、観てまいりました。
広告なし、パンフレット未販売という異例づくめでしたが、これが功を功を奏して、平日の午前中だというのにシアターは満員でした。
米津さんが歌うテーマ曲「地球儀」さえも有料ダウンロードでないと聴くことができないという、行動を起こさないと何も手に入らないスタイル。
情報があふれかえり意識しなくても知ることができる時代で、現代の若者たちが「自分の意思で行動する」という事を無意識にできるように仕掛けたトラップのような気もします。
気になるなら、劇場までおいで。
というメッセージを強く感じたので、ネタバレなしで感想書こうと決めたのですが、なかなか難しいですね。
宮崎駿監督のアニメ作品を、映画でもテレビでもいくつか見たことがある方なら、「あ、ここ○○みたい」と思えるシーンがいっぱい出てきます。
「集大成」と評される所以です。
キャラクターも、宮崎作品の誰かに似ているデザイン。
私は、主人公は「もののけ姫」のシタカに似ていると感じました。
第二次世界大戦が始まって間もないころ。火災によって母親を失った主人公は、2年後、父と共に母親の実家に移り住みます。
そこには妊娠中の継母が待っていて…
工場を経営している父親は忙しく、主人公は亡き母の生まれ育った家で、継母や使用人たちと一緒に過ごすことになるのです。
親の都合で、別の地に引っ越すことになった主人公というのは「千と千尋の神隠し」のようですね。
ただし、千尋ちゃんと違って男の子ですし、社長さんのご子息という事で、礼儀正しくきちんとした立ち居振る舞いはできるけど、思春期独特の鬱々とした感情を抱えていて、聞かん坊な感じもあります。
感情を素直に出すことができないようで、父親にも継母にも上手く甘えられないところが、ちょっともどかしいというか、可愛いというか。
ファミリードラマではありますが、そこに、もののけ姫とハウルの動く城的な要素が加わり、いなくなった継母を探す冒険へ。
この冒険部分が、具体的なようで、とても抽象的。
まるで、夢の世界のようだけど、外の世界ともつながっているので、時間軸が中と外の同時並行で進んでいきます。
場面転換がちょこちょこあるので、主人公が体験している世界に没頭できない部分も、
感情移入が難しいかも。
主人公と一緒に冒険するというよりは、家族を取り戻すために奮闘している千尋ちゃんを見守るような目線で見ると、すんなり入って来るかも。
木村拓哉さんが、主人公の父親を演じているのですが、これが結構ハマってる。
軍需景気でイケイケな会社の社長なので、強引でいけ好かないタイプなのかと思いきや、従業員の信頼も厚く、家族を愛する良き人物でした。
ただ、ちょっと成金臭いのよね。
でも、年寄りのいう事にも耳を貸し、柔軟な思考をもっていて、行動力もある。
銭形のとっつあんみたいな、愛すべきキャラになってました。
賛否両極の作品ですが、テーマはやっぱり「生きる」だったな、という感想です。
タイトルは、宮崎監督からの問いかけでしょうね。
主人公は、この冒険の終わりに「どう生きるか」答えを見つけました。
最後のシーンは、成長した主人公とその家族。
彼の成長が見える良いエンディングで、米津さんのやわらかな声の「地球儀」が、しみじみと心にしみました。