武士道での中心かつ最も厳格な徳目は「義の精神」とされる。

「義」とは、打算や損得のない人間としての正しい道、すなわち正義を指すものであり、「義」から派生した言葉に大義・道義・節義・忠義・仁義・信義・恩義・律義、更には義理・義務・義憤・義侠・義士・義民・義挙などがある。
武士はこの「義」を武士道精神の中心に据え、これを踏み外した者は卑怯者として糾弾の対象となった。

「義」には「正しい行い」と同時に「打算や損得から離れた」との意味が含まれている。
この義を実践するためには、人間の根源的なエネルギーとされる欲を制しなければなし得ることはない。

しかし、現代人の多くが行動判断の基準としている合理的な考え方は、「どちらが得か」で判断してしまいがちだ。
それに対し武士道における「義」は、普遍的な「良心の掟」に基づく絶対的価値観を基本とする、いわば不合理の精神であり、「義」を遂行するためにはよほどの自律心を養わなければならない。
『武士道』の著者で知られる新渡戸稲造は、武士道の基本は「フェア・プレイ」の精神と言っている。
フェア・プレイの根源とは「義を貫く」ということであり、武士は例え戦いに勝ったとしても、不正な行為をして勝った者は賞賛されなかった。

損得感情から離れた本当の意味での正しい行いを実行すること。

男としてだけでなく、日本人として日々実行していきたいものである。