(写真:大上 祐史)
幹線道路を夜間通行止めにし、狭い路地から運んできた橋桁を大型クレーンで一括架設する――。
大阪圏の自動車交通をさばく阪神高速道路で、“ミッシングリンク”の解消に向けた工事が山場を迎えている。
1号環状線と16号大阪港線が交差する要衝、西船場ジャンクション(JCT)の改築事業だ。
環状線は時計回りの一方通行となっており、東西に走る大阪港線は環状線の「9時」の位置にある西船場JCTで交差する。
ただし、大阪港線を西から東に向かって進んできた車が同JCTで環状線に直接入ることはできない構造となっていた。
近隣のビルが干渉して、渡り線の橋桁を架けられなかったからだ。
(資料:阪神高速道路会社)
大阪港線を西から来た車が環状線を使って北に行こうとする場合、従来は以下の2つの方法しかなかった。
1つは、大阪港線の出口でいったん降りて、環状線の入り口から再び入り直す方法。
もう1つは、西船場JCTを東に真っすぐ進んで環状線の「3時」の位置にある東船場JCTで環状線に入り、環状線を時計回りに5.5km半周した後、西船場JCTを通過して北に向かう方法だ。所要時間が延びたり、道路が混雑したりといった弊害を招いていた。
近隣のビルが公開空地を確保して建て替えられたことで、阪神高速道路会社は2011年度に西船場JCTの改築工事を本格化した。
大阪港線東行きから環状線北行きへの渡り線(信濃橋渡り線)を新設するとともに、大阪港線と環状線をそれぞれ拡幅して、分岐や合流がスムーズにできるようにする。
さらに、環状線に入る既設の信濃橋入り口が新設する渡り線の支障となるため撤去し、西側にずらした位置に再構築する。
(資料:阪神高速道路会社)
- 大阪港線の拡幅:延長約800m、拡幅幅員2.75m(2018年5月に完成して先行開放)
- 信濃橋渡り線の新設:延長約180m、総幅員8m
- 信濃橋入り口の改築:延長約260m、総幅員5.75m
- 環状線の拡幅:延長約710m、拡幅幅員3.25m
一連の工事は2019年度の完成を目指す。2019年5月には、交通量の多い一般道を夜間通行止めにした最後の大規模な架設工事が実施された。
現場付近で地組みした長さ37m、重さ49tの橋桁を多軸台車で運搬し、550t吊りの大型クレーンで一括架設するというものだ。
(写真:大上 祐史)
550t吊りの大型クレーンが到着。クレーンの重量で本町通の舗装が傷まないように、鉄板を敷いている。
クレーンのバランス調整のために、カウンターウエートを積載する作業が進む。
(写真:大上 祐史)
橋桁は北に150mほど離れたヤードで地組みした後、多軸台車に載せて架設地点まで運び、大型クレーンで一括架設する。
ヤードは環状線を拡幅するために阪神高速が買収した用地と、環状線の高架下にある大阪市が管理する駐車場、さらに一般道を一部占用して確保した。
(資料:阪神高速道路会社)
橋桁を載せた多軸台車は、環状線の西隣を並走する一方通行の狭い路地を通る。
午前1時20分ごろ、架設地点の近くまで迫ってきた。
(写真:大上 祐史)
橋桁は長さ37m、幅5.75m、重さ49tの鋼単純合成鈑桁。多軸台車は長さ約11mで、7軸の台車を幅方向に2台連結している。
人間がゆっくりと歩く程度の速さで架設地点を目指す。
(写真:大上 祐史)
橋桁と電柱との距離はわずか数センチメートル。
ためらいなく擦り抜けていく姿に、現場の報道陣から感嘆の声が上がった。
(写真:大上 祐史)
午前1時30分ごろ、橋桁が架設地点に到着した。
(写真:大上 祐史)
本町通の中央に据えた大型クレーンのワイヤに橋桁を玉掛けする。
(写真:大上 祐史)
午前2時10分ごろ、橋桁は多軸台車を離れ、大型クレーンに吊り上げられる。
(写真:大上 祐史)
桁架設の様子を35秒のタイムラプス動画にまとめた
(動画:大上 祐史)
(写真:大上 祐史)
橋桁の架設は予定よりも2時間ほど早く終わり、午前6時に本町通の通行止め規制が解除された。
橋桁の架設について、阪神高速建設・更新事業本部大阪建設部大阪改築事務所の川合将斗氏は次のように話す。
「非常に狭い都市空間での架設ということもあり、作業が終わる最後まで気が抜けなかった。今回の架設に当たり、道路利用者や沿道の関係者など多くの方のご理解とご協力をいただいた。今後も安全管理に十分留意しつつ、早期完成を目指して事業を進めていく」
国内初のワッフル型UFC床版を採用
今回架設した橋桁の上には2019年7月、国内初となるワッフル型UFC(超高強度繊維補強コンクリート)床版が設置された。
1枚当たり長さ2.45m、幅5.75m、厚さ15cmの床版パネルを15枚並べた。
(資料:阪神高速道路会社)
信濃橋入り口に採用したワッフル型UFC床版(写真:阪神高速道路会社)
UFC床版は阪神高速と鹿島が共同開発したプレキャスト床版で、薄くて軽く、高い耐久性を持つ。
ワッフル型と平板型の2種類があり、床版の下面にリブを格子状に配置したワッフル型は鋼床版と同等の軽さが特徴だ。
新設の長大橋などへの適用を目標に開発された。
阪神高速は今後、大阪湾岸道路西伸部でも採用に向けて検討を進めていく。
一方、平板型はワッフル型ほど軽くないものの、製作コストが安く、曲げ強度が高い。
既設橋の劣化した鉄筋コンクリート(RC)床版の取り換えなどで需要を見込んでいる。
既に阪神高速15号堺線の玉出(たまで)入り口の床版取り換え工事に採用した実績を持つ。
[現場概要]
工事名:西船場ジャンクション改築事業
施工場所:大阪市西区西本町~江戸堀
発注者:阪神高速道路会社
施工者:横河ブリッジ、清水建設など
完成予定:2019年度
事業費:約168億円
これはまた凄い~
クレーンの超テクニック!
ワッフル型UFC床版もいい!!
なんかワッフル食べたくなりました
出典=https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00585/081400018/?P=1