過去500年で最も暑かった夏トップ5がこの15年に集中
6月26日、涼を求めるパリ市民と観光客が、セーヌ川を挟んでエッフェル塔と向かい合うトロカデロの噴水で遊ぶ。(PHOTOGRAPH BY SAMUEL BOIVIN NURPHOTO/GETTY IMAGES)
ヨーロッパが暑くなっている。
2019年6月はまたもや熱波に襲われ、死者が出る事態となった。
フランス、ドイツ、ポーランド、そしてスペインの一部で38℃超を記録し、6月28日には、フランスで観測史上最高となる45.9℃まで気温が上昇した。
同じことは昨年も起こっている。記録的な暑さによって、スウェーデンで700人、デンマークで250人以上が亡くなったのだ。
気候変動を原因とする異常気象の時代に突入する前には、冷房など不要だった国々である。
ヨーロッパで過去500年のうち最も暑かった夏のトップ5は、すべてここ15年以内だ(今年は含まない)。
いずれにおいても死者が出た。最悪だったのは2003年の熱波で、7万人以上が亡くなっている。
2010年には、ロシアだけで5万6000人の死者が出た。(参考記事:「熱波の2010年、史上稀に見る暑さに」)
ジェット気流が遅くなって
米ペンシルベニア州立大学のマイケル・マン氏によると、こうした極端な暑さはジェット気流(西から東へと吹く上層気流の帯)と関係があるという。
マン氏は2018年に執筆した論文において、昨夏の北半球における歴史的干ばつ、熱波、山火事、洪水を、ジェット気流の速度低下と関連付けた。
今年、インドのモンスーンの雨量が少なかったことや、広く米国中西部で洪水が起こったことも、同様の理由によると考えられている。(参考記事:「夏の異常気象、2100年までに1.5倍に? 最新研究」)
「ドイツ、ポツダム気候影響研究所(PIK)の仲間たちも、まさに今ヨーロッパで起こっていることの原因はこれだと立証しています」。
マン氏はメールでそう回答する。
北極では特に温暖化が進行し、海氷が失われるせいで、本来のジェット気流のパターンが変わってしまっている。
そう話すのは、オランダ・アムステルダム自由大学およびPIKのディム・カウムー氏だ。
ジェット気流は、北極の冷たい空気と熱帯の暑い空気との温度差によって生じる。
昨冬、観測史上最も少ない氷量を記録した北極では、この温度差が小さくなり、ジェット気流の速度が低下しているのだ。(参考記事:「北極海の海氷面積、観測史上2番目の小ささに」)
沈みゆく太陽が、南極半島の西岸沖に位置するルメール海峡を赤く染める。南極大陸を取り巻く海や大気の温暖化が進むにつれ、沿岸部の氷は崩れてきている。 PHOTOGRAPH BY CAMILLE SEAMAN
緩やかに流れる川のように、遅いジェット気流は蛇行を深め、夏の間、場合によっては数週間にもわたって同じ場所に留まる。
熱波であれ、豪雨であれ、気象パターンも共にその場に留まることになる。
現在、インドでは1カ月にわたって熱波が居座り続け、気温も51℃を記録している。
それに比べれば、ヨーロッパの気温は大したことがないかもしれない。だが、ほとんどのヨーロッパ人、特に北部在住者は、30℃を超えるような気温には不慣れである。
冷房の存在はいまだに珍しく、例えばフランスでは5%未満、ドイツでは2%未満の家庭にしか冷房は設置されていない。
都会の熱帯夜
PIKのユルゲン・クロップ氏によれば、ヒートアイランド現象のため、ヨーロッパ都市部で猛暑となる日は、郊外に比べて2倍近くの数になる。
日中に熱を吸収したコンクリートやアスファルトは夜になると熱を放出するので、都市部の気温はなかなか下がらない。
二酸化炭素排出量を大幅に削減しなければ、今世紀末には猛暑の日が10倍にもなるという。「ここベルリンでは、6月26日に6月の史上最高気温となりました」(参考記事:「死の熱波、2100年には人類の4分の3が脅威に直面」)
上昇し続ける気温にどう対処するか、難しい議論が交わされているとユルゲン氏は言う。
冷房が増えればエネルギー使用量も増えるので、二酸化炭素排出量が増大し、気候変動を悪化させることになってしまう。
同氏によれば、ドイツ人の大半は気候変動への対策を強化することを望んでいる。一方で、窓枠に取り付けるタイプの冷房は売れに売れている。
2015年、ノルウェーの海洋調査船ランス号は5カ月にわたり海氷とともに北極海を漂い、氷の変化をつぶさに調査した。写真は2月後半の同船。極夜の“夜明け”が近づきつつある。 Photographs by Nick Cobbing
ヨーロッパ全土で7万人以上の死者が出た2003年の熱波の教訓は生かされていると、米ウィスコンシン大学マディソン校の医学史教授、リチャード・ケラー氏は話す。
2003年のパリ熱波について書いた「Fatal Isolation」の著者である同氏は、今年の死者数は減るはずだと言う。
「フランスはかつてよりもずっと準備をしています。救急システムが整えられていますし、危険に対する認知度がはるかに向上しています」
ケラー氏によれば、フランスの学校のほとんどには冷房が設置されていないため、休校となったところもある。
都市部には涼む場所や仮設の水飲み場が設置され、公園やスイミングプールは遅くまで営業している。
大気汚染により熱波が悪化するため、古い車はパリに入ることを禁止された。
大気汚染の軽減は、6月28日にパルク・デ・プランス・スタジアムで行われた女子サッカーワールドカップのフランス対米国戦を現地で観戦したサポーターにとってはせめてもの救いとなったかもしれない。
「熱中症を心配しないといけないのは、トップアスリートたちよりもむしろ、サポーターのほうです」とケラー氏は話す。
こりゃひどい~
ジェット気流が変わるなんて。。。
海流だけじゃなかったんだ。。。
フランス 45℃ インド51℃
それだけ見ると 日本は影響少なめかも、、、
周りが海だからか、、、
クーラーあるだけまし~
出典=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/070200385/