今回は無人でISSへ、順調なら7月にも実現

 

 

米国フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターからの打ち上げを3月2日に控え、「ファルコン9」ロケットの先端に取り付けられたスペースX社の宇宙船「クルードラゴン」。(PHOTOGRAPH BY JOEL KOWSKY/NASA)

 

 米国のロケット発射台からは、もう8年近くの間、宇宙飛行士が軌道に打ち上げられていない。

 

しかし、この状況はもうすぐ変わるかもしれない。(参考記事:「見守る観衆、アトランティス打ち上げ」

 

 

 米国時間の2019年3月2日、スペースX社初のカプセル型有人宇宙船「クルードラゴン」が米国フロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられた。

 

クルードラゴンを搭載したロケット「ファルコン9」は第1段ロケットが再使用可能で、これまでの打ち上げと同様、発射から10分後に地球に戻り、ドローン船(無人船)に着陸した。(参考記事:「スペースXの最新ロケット、ここがスゴイ」

 

 

 誤解のないように言っておくが、今回の打ち上げではクルードラゴンに人は乗っていない。

 

これはNASA用語で「デモ1」と呼ばれる実験で、軌道周回中に新しいハードウェアの欠陥を見つけ出したり、システムの動作をテストしたりするために行われているのだ。

 

今回の成功によって、米国は「自力」での有人宇宙飛行の再開に向けて大きな一歩を踏み出したことになる。

 

今後予定されている2回目の試験飛行も順調に進めば、今年7月にもスペースX社初の有人飛行が行われる見込みだ。(参考記事:「前沢氏の月旅行は計画通りに実現するのか?」

 

 

「米国の宇宙飛行の歴史における大変重要な成果です」とNASAのジム・ブライデンスタイン長官は発射を伝える放送中に述べている。(参考記事:「億万長者たちの宇宙開発競争 勝つのは誰?」

 

 

 クルードラゴンが無事軌道に到着した今、この画期的な出来事について知っておくべきことを解説しよう。

クルードラゴンには人の代わりに何が乗っている?

「リプリー」と名付けられた、人間の形をした実験機器だ。映画『エイリアン』でシガニー・ウィーバーが演じた登場人物の名前にちなんでいる。

 

センサーがついていて、カプセル内の状態を監視しながら、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて旅をする。(参考記事:「息をのむほど美しいISSからの10枚の写真」

 

 

 地球の形のぬいぐるみも一緒だ。

 

宇宙船が微小重力に達すると浮き上がってそれを知らせてくれる。

 

乗組員や貨物の重さを想定した大量の「おもり」も載せられている。

 

また、宇宙ステーションで実際に使う約180キロの追加機器や消耗品などが積まれたと、米国惑星協会は伝えている。

 

 

宇宙滞在340日、地球を周回すること5000回以上。米国の宇宙飛行士スコット・ケリー氏が1年にわたる宇宙滞在のなかで撮影した魅惑的な写真たちは、人々の記憶に刻まれることだろう。(PHOTOGRAPH BY SCOTT KELLY, NASA)

 

「リプリーが帰還したら、すべてのデータが手に入り、一般人の宇宙飛行にも一歩近づくでしょう」とスペースX社のアリレザ・ファージュード氏は語る。

クルードラゴンの目的地は?

 クルードラゴンは3月3日、ISSに自律的にドッキングした。ISS滞在中の宇宙飛行士が物資を降ろし、エンジニアは搭載されたソフトウェアが正常に機能していることを確認する。

 

クルードラゴンは3月8日にISSを離れ、米国フロリダ州沖の大西洋にパラシュートで降下する。リプリーとともに、宇宙ステーションで行われた科学研究の実験サンプルなども持ち帰る予定だ。

 

スペースX社の「ゴーサーチャー」と名付けられた船がこの宇宙船を回収する。

 

 

ケネディ宇宙センターで打ち上げを待つ、スペースX社の宇宙船クルードラゴンを搭載したファルコン9ロケット。2019年2月28日。(PHOTOGRAPH BY JOEL KOWSKY/NASA)

 

 

貨物宇宙船「ドラゴン」との違いは?

 スペースX社の無人補給機「ドラゴン」は、2012年から地球とISSの間を往復して貨物を輸送している。

 

しかしクルードラゴンの機体はドラゴンより長くて重く、乗客が眺めを楽しめるように窓も3つ付いている。

 

内部には最大7人の宇宙飛行士が乗れる座席と、生命維持に必要なシステムを備えている。

 

さらに「ロケットの発射時または上昇中に思いも寄らない緊急事態が起こった場合」に宇宙飛行士が脱出できるように、8基の「スーパードラコ」離脱用エンジンが取り付けられているとNASAは説明する。

人間が乗るのはいつ?

 今回と次回のテストが成功すれば、今年の7月にも実現するかもしれない。NASAはすでに有人初飛行のパイロットとして、宇宙飛行士ロバート・ベンケン氏とダグ・ハーリー氏を指名している。(参考記事:「NASAが初の民間宇宙飛行の乗員決定、日程は未定」

 

ロシアや他の航空宇宙企業とNASAとの関係はどうなる?

 NASAは現在、米国の宇宙飛行士をISSへ送るために、1人1回につき約8000万ドル(約89億円)もの代金を支払ってロシアのソユーズ宇宙船を利用している。(参考記事:「ソユーズ打ち上げ失敗でISS滞在の飛行士どうなる?」

 

 

 NASAは一方、ボーイング社が設計した民間のカプセル型有人宇宙船「CST-100スターライナー」にも投資している。

 

スターライナーの最初の打ち上げ実験は今年4月に予定されており、もし成功してその後の実験もうまくいけば、8月には最初の乗組員を宇宙に運ぶだろう。

 

 

宇宙が大好きな人ならきっと、ビル・インガルズ氏の作品にうっとりと見とれたことがあるだろう。NASAの上級契約フォトグラファーであるインガルズ氏は、世界を飛び回りながら、30年にわたって宇宙開発の歴史に残る貴重な瞬間を写真に収めてきた。(PHOTOGRAPH BY NASA/BILL INGALLS)

 

 

「NASAは引き続きボーイング社、スペースX社の両社と協力して、人を地球の低軌道に運ぶための安全性、信頼性、費用対効果の高いシステムを設計、構築、試験、運営してまいります」と、NASAの広報官ジョシュア・フィンチ氏はメールでの取材に回答している。

 

 NASAは、さらに遠くの宇宙まで人を運べるカプセル型有人宇宙船「オリオン」を独自に開発している。

 

これら全ての宇宙船が宇宙飛行士を乗せてISSとの間を往復するようになれば、NASAはソユーズの乗船代を支払わずにすむようになるだろう。

しかし、だからといって、将来ロシアと米国の宇宙飛行士が同じ宇宙船に乗ることがなくなるわけではない。(参考記事:「競争か協調か、火星を目指す世界の動き」

 

 

「NASAとロシア国営宇宙公社ロスコスモスは、今後もこれまでどおりパートナーとして緊密に連携し、持続可能な有人探査システムの開発を行います。国際宇宙ステーションの安全な運営のため、米ロ両国のメンバーを含む乗組員を一緒に送り込んできた歴史があります」とフィンチ氏はメールに書いている。

 

何と言っても、その名が示すとおり、ISSは複数の国によって設計・製造されたモジュールが組み合わさってできている。

 

「米ロ両国の混成メンバーが同じ宇宙船に乗って行くことで、同じ仲間として宇宙ステーションを運営していけるようになるのです」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:スペースX「クルードラゴン」打ち上げ成功 写真あと6点

文=NADIA DRAKE/訳=山内百合子

 

 

ついにアメリカが有人飛行再開!

いつかこうなると思っていたが、よかったです。

脱出装置もあって安全!!

これがアメリカだよねー

 

 

出典=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/030500140/