梅田スカイビル(大阪市北区)
景色よりも「技術」を前面に──。新装した梅田スカイビル・空中庭園展望台の改修方針だ。リフトアップという刺激に満ちた施工方法〔写真1〕こそが集客の売り物になると考えた。技術観光(テクノツーリズム)を考えるうえで学ぶ点は多い。
施工後半、山場となる空中展望台のリフトアップを終えた梅田スカイビル。1992年5月下旬撮影。JR大阪駅の北側、梅田貨物駅に隣接した約4.1ヘクタールに開発した「新梅田シティ」の核となるツインタワー。93年7月に開業し、今年7月2日に開業25周年を迎えた(写真:三島 叡)
空中庭園展望台の年間入場者数は、開業3年目以降、漸減し続けていた。それが開業から20年以上もたった2015年、開業翌年の年間入場者数(108万人)を上回り、121万人を記録。さらに2年連続で増え、17年は150万人となった〔図1〕。
入場者数が上昇に転じた理由としては、2008年に「世界の建築トップ20」に選ばれた以外に、11年にJR大阪駅ビル、13年にグランフロント大阪が開業し、大阪駅北側への人の流れが増えたことがある。06年以前の外国人入場者数はデータなし(資料:積水ハウス梅田オペレーション)
屋上のスカイウォーク(写真:日経 xTECH)
屋上のスカイウォーク(写真:日経 xTECH)
上昇に転じたきっかけは、08年に英国「THE TIMES」紙が掲載した「世界の建築トップ20」という記事。
タージマハル(インド)やシドニーオペラハウス(オーストラリア)などとともに、梅田スカイビルが選出された。「梅田スカイビルほどアドレナリンがあふれ出る、スリルに満ちた高層ビルはほかにない」(選評より)。これが話題となり、外国人観光客が急激に増えた。
〔写真2〕2棟をわずかに外側に反らせ、リフトアップにより修正
(写真:竹中工務店)
(写真:竹中工務店)
1992年5月18日に実施されたリフトアップの様子。多くの見学者や報道陣が見守るなか、朝7時に吊り上げがスタート。55×55m、約1000トンの庭園を1日かけて約150mの高さに吊り上げた。
2棟の上部から内側に張り出したガーターでワイヤを巻き上げる。リフトアップが進むと内側に偏荷重がかかるため、両棟とも外側に36mm反らせて建て方を行い、リフトアップにより修正される仕組みとした。
この後、空中エスカレーターやブリッジなどもリフトアップで設置した(写真:竹中工務店)
A:40階のシティ・ビュー。開口部近くに並んでいたアベックシートを撤去し、すっきりした空間に改修(写真:日経 xTECH)
ガイドツアーでは、オフィスワーカーしか使用できない22階の空中ブリッジ(写真5参照)を通ることができる。ここには制振のためにTMD(チューンドマスダンパー)が設置されており、ブリッジ中央部でそれが見えるようになっている。
実際、ほとんど揺れず、当時の最先端技術を体感できる(写真:日経 xTECH)
〔写真5〕入場者増よりも客単価アップに転換
現在の梅田スカイビル全景。ビル本体から独立して立つシースルーエレベーターも画期的だ。
ただ、空中庭園に上る動線はこのエレベーターしかないため、年間150万人を記録した2017年の入場者数は限界値に近いという。
それもあって展望台をリニューアルし、入館料を1000円から1500円に上げることにした(写真:積水ハウス梅田オペレーション)
ギャラリー、カフェなどのある40階(写真:日経 xTECH)
夕刻、スカイウォークの西側に来館客が鈴なりに(写真:日経 xTECH)
すごいなあー
建物を反らせて ブリッジを入れる!
ありえないよねー
風で揺れないのかな!?
出典=https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00373/082100015/