君のためじゃないのが、虚しい。

君のせいじゃないのが、悲しい。


わたしを強くする魔法の力を

与えてくれたのが君じゃないことが

とてもとても 寂しい。


わたしを強くする魔法の力が

まだ 完全な物じゃなく

まだ わたしは凍った時間の中で

本物の 魔法の力を待っている。


早く、わたしを強くして。

止まった時間を動かしたいから。


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「お前何かあった?」


昨日ダンスの練習中。滅多に人を褒めない(むしろ貶す…というわけではないが厳しい批評家な)相棒が言いました。


「お前、1.5倍くらいに上手くなってるんだけど!」


もともとのわたしの技量が少なかったら簡単に1.5倍にはなるだろうさそうか相棒よもとのわたしの技量が足らなかったと言いたいのか、と捻くれた考えは捨て置いて。素直に喜ぶことにしました…滅多にないことだし。

正月実家に帰ると言って12月末に帰省したのだが、帰省する前よりわたしが上手くなっているとのこと。

いつも「下手」「駄目」と言われていたので、寧ろ嬉しいよりも驚いた。自分では何となく体が動くとは思っていたが、上手くなっているとは解っていなかったのだから。


「まさかスタジオ1人で行ったの?」


スタジオっていうダンスの教室があるんだけど、いつもそこには相棒と一緒に行ってる。以前「1人で行って来ようかなぁ」と漏らしたことはあるが、1人で行ったことなどない。何より1人で行く金がない(通っているスタジオは学割が利くが、1レッスン30~60分で5000円もかかるのだ!)


「まさか、実家に帰っただけだよ」


事実である。

練習する場所なんて無かったし、何より正月はだらけるもの…集中した練習なんてできるわけもない。

確かに大晦日から元旦に日が変わる時には歩いてダイエットする機械に乗っていたけれど。

そんなんで上手くなったら苦労はしない。正月太りで3キロも太ったんだし。


けれど思い当たる節がある。


わたしは好きな人が出来ると、何をやっても成長する(中学の時にもそんなことがあった)。

単純だから、好きな人のために、頑張る。自分のために頑張ればいいのに、自分のことだと面倒だから、やらないのだ。

好きな人ができたわけではないが、実家に帰った際、昔好きだった人に会ってきた。また好きになりそうだった。どきどきした。ときめいた。

そんな微妙すぎる恋心の再発が、きっとわたしをまた強くしたのだろう。




「実家で鋭気を養ったんだよ」




ある意味間違ってはいない、わたしの返答。

あと2年も相棒と一緒にいることになるんだし、相棒を好きになったら凄く楽なんだろうけれど。

相棒もわたしを好きになってくれたらいいんだろうけれど。

わたしから言うこともないだろうし。恥ずかしいから。

相棒も自分から言う人間ではない、と公言していた。


だから―――当分、昔の淡い恋心を楽しむとする。