智慧のWord - 本&テレビ&日常の話より得た智慧を紹介。- -11ページ目

智慧のWord - 本&テレビ&日常の話より得た智慧を紹介。-

読書、テレビ、ときに日常の話により、気になったトピックについて気ままに綴ります。

やっと読めた!芥川賞受賞作品。作者は言うまでもないだろう。お笑い芸人ピースの又吉直樹が初めて書いた小説。
実は、又吉氏の書いた「第2図書係補佐」という、彼の読んだ純文学作品を中心とした本を紹介する、といった内容の本を読んだことがあるのだが、その時から文才を感じていた。

コンビのお笑い芸人のボケ担当である徳永と、先輩芸人神谷が主な登場人物。彼らがお笑いというシビアな世界で、それぞれのスタンスで奮闘していく様を描いている。

我ながら、この一行でのまとめは秀逸かもしれない。物語の展開自体は、非常におとなしく地味と言える。しかし、そんな地味な展開なのに、どの部分をとっても平坦に感じないのだ。又吉氏の独特な言葉のチョイスが光る。
決して華やかでクライマックスというような展開もないのだが、彼らの会話劇は、終始ユーモアが溢れる。又吉氏のサービス精神を感じてしまう。物語全体が鬱屈な雰囲気なだけあって、クスッと笑える言葉の数々とのバランスが秀逸なのだ。

また、お笑いの世界にいるだけあって、リアルだし、またこの主人公徳永が、又吉氏を彷彿とさせるキャラクターであったため、読んでいる間ずっと、又吉氏の顔しか浮かばなかったが、同時に彼にしか書けない作風だと思った。

私の好きなシーンと言葉はこちら。
久々に徳永が神谷を誘って池尻大橋で飲んだあと、由貴の部屋で語り、徳永が神谷を怒り責めるシーン。今まで抑揚のなかった徳永が感情的になる初めての場面だ。
「捨てたらあかんもん、絶対に捨てたくないから、ざるの網目細かくしてるんですよ。ほんなら、ざるに無駄なもんも沢山入って来るかもしらんけど、こんなもん僕だって、いつでも捨てられるんですよ。捨てられることだけを誇らんといて下さいよ」
この比喩表現は、又吉氏の才能をストレートに感じる。

次作を期待してしまう。そして同時に、私はお笑い芸人としての又吉氏も好きなので、ピースもずっとやめないでね、と思った。