別にどうってわけじゃない
何が嫌とか、思った以上にない
きっとみんなこうやって慣れてくるんだろうなと
「まずは謝れ」と歳をくらった講師なるものが言った
画面上から一気に血の気が引いた顔が集まる
「期待に応えられなかったことに謝るのが先決だ」と言った
どうってことない
「エクスクラメーションマーク?びっくりマークだっけ?あれ多用するのもおかしいよね笑」
屈託のない顔で白髪を拵えた男は自分の価値観をベタベタと押し付ける
「おしゃれは自分の目、身だしなみは相手の目を気にしろ」
この世界は自分を殺すことが良しとされるのだろうか
「新入社員は目立つんだから、ちゃんとしてろ」
ああ、この軍隊的な考え方、そういえば昔にあったな。戻ってしまったんだな。
「私、と言え。僕や自分は禁止だ」
自分と言いかけた男は、途中でやめて私と言い直した。
私はそれが彼の過去を否定してるようにさえ感じた
「社会人として」
「ビジネスマンとして」
監獄に浸るための授業は毎日行われている
どうってことない
どうってことない