みんな騙し騙し生きていたはずだ

毎朝登校や出勤をして、休みの日もなんだかんだ予定があって

たとえばその日そこに行かなければ会えない人と

一言二言交わす

クラスメイトだったり、同僚だったり、店員だったり

景色が変わって、人の顔を見る機会も多い

天候に一喜一憂して、帰り際には外の空気を嗅いで何かを思い出す

別にそれがどうってわけではないことでも

なんだかんだそうやって毎日を過ごしていたはずだ

人々はその何気ない変化に対して実は敏感で、そんな小さな変化と周囲の人との間に起こるちょっとした出来事と自分を結びつけることで生きながらえていたのかもしれない

旦那とちいさな娘を持つ30代の女が死んだニュースが流れた

自殺だという


流行風邪に苛まれ、壁を築いて元の生活を夢見ながら療養する

人との関わりを断つことで小さな変化と断絶していく

騙し騙し生きていた毎日が

実は無意味なことに気づいてしまう

彼女もきっとその一人だったのかもしれない

ウイルスが与える影響はものすごい

しかし1番恐ろしいのは

変化がないことで我に帰る人々が自ら死に陥ることである

そんな気がするのだ