頭が痛い
最近流行っている細菌兵器のせいだろうか
こうしている間にもSNSとベッドと台所を行ったり来たりして何も考えることなく過ぎる幸せが失われていく
最近建った二階建てのアパートからは毎日一定量の煙が漂う
兄は何も言わずに小さく開いた窓を締める
隣の家からは毎晩決まった時間に車庫から音が聞こえてくる。
バタンと締める車のドアの音を聞くたびに
「ああ、また今日が終わってしまうのか」
と頭痛が更に増していくような感じがする。
自粛生活が続いてなお、考える様々なこと
親は悪気もなく私を応援する
その奥に誇りや愛情のようなものを感じると、自分の意思を蔑ろにしてしまう。
多分、昔からそうだったのだろう。
私の脳裏に潜む、心で泣く自分や意志を押し殺して現状に満足したふりをする自分をずっとずっと見て見ぬふりしている。
「私たちは来て欲しいと思ってますのでぜひ前向きに」
雑音に紛れる担当者の声は電子音のように機械的だった。
そういえば夜に考え事が出来なくなったのは、毎日これもまた一定の時間に鳴る電子音のせいだ。
「甘いんだよなあ本当に」
優しい声で毎日電話ごしに愛を注いでくれるあの人は、私に対して甘ったるい声でよくそんなことを言う。
こうした架空世界のような優しくふわふわした世界はそういえば数年前も経験した。
同じような役割で似たようなセリフを吐いた別の人物はそのたった数ヶ月後に態度を変えて発言が無かったことのようにふらふらと姿を消した
たまに、副作用で訪れる漠然とした不安を、その人物の残った声やメッセージを聞くことで我に返して消滅させなければならない
そんな自分もまた醜い
こんな世の中で贅沢な悩みだよ
とよく人は言う
人生は選択の嵐である
とCMで誰かが言っていたな
迷ったら苦しい方へ
これは以前書いた人物が強い口調で話した言葉の一部だ
バリバリ働きたいなら向いてます
残業で稼ぐようなもん
名の知れた大学で、名の知れた進路で、名の知れた会社に就くことが私なのだろうか
本当はそうじゃないなんて強く言う気力もない
画面越しにしか会ったことのない人間たちがあれほどキラキラしていてあれほど敵わなくてあれほど羨ましいと思った経験が未だかつてあったのだろうか
夢を実現できる機会を与えられても
それを叶う環境をつくりあげるのは並大抵の努力では不可能であることを身をもって体感してしまった
考え直せよ
きっと最近頭が痛いのは私の心が脳にそう訴えかけているからである