「マージで無理だったわ。」
その表情は半年前の彼からは想像もつかないものだった。
優しそうな顔で、幸せそうに彼女を紹介する半年前のその人は、写真の中でテーマパーク特有のお揃いの帽子を被り、朗らかに微笑んでいた。
数ヶ月見ていないうちに周りの状況も変化する。
「そいえばさ、別れたんだって」
「え、待って。本当だ。全部消えてんじゃん」
愛している愛していると必死に投稿していたsnsは突如としてゴミ箱行きになる。
時間と共に一対一のメッセージのやりとりから、お互いの日々を写真と24時間で消えるあの投稿だけで共有するSNSに移行する瞬間はいつでも切ない。
時間の経過と共に刻一刻と灰になる準備が始まっている。
数ヶ月前まで愛する人であった人に向けられる表情とは思えない、彼の荒んだあの顔を見たとき強烈に猛烈に、何かに追い詰められた感じがした。