就活中の私はスーツを着る
この個性を抹殺する黒のスーツに私はいつでも嫌悪感を覚える。
海苔のような髪色でひとつ結びにした髪の毛は、たった数年前の明るい髪の毛を羨み、窮屈だ窮屈だと毎日のように叫んでいる。
兄は私に言う
「だってそれが当たり前だろ」
本当に学生は個性を殺すこのスーツになんの疑問を抱くこともなく着せられているのだろうか。
自分で選んだ美しい髪色も、個性を表す手段とも言える洋服も、全部全部捨てて、慣れない靴で満員電車に揺られる就活生は、果たして本当にそれが当たり前だと思っているのだろうか。
この黒のスーツを着るたびに、私の個性も、私の考えも、私の感情も、全てがないものかのようにされるのである。
「だってそれが当たり前だろ」
そう言った兄の目は既に全てを捨てているように見えた。