ずっと違和感があった
「どうして付き合ったの?!」
安い居酒屋の質の悪い畳の上でほろ酔いの女がファストファッションに身を固めた男に大声で質問する。
「可愛かったから。」
違和感があった
「あいつブスのくせによくそんなこと言うよな」
「あの子はね〜まあ可愛いからいいでしょ」
かわいいことが絶対である世界はある日突然来た。
子どもは人の微々たる外見の違いに対して、行動を変えることはしない。
例えば鬼や悪役は身の安全を懸念して避けるものの、育った環境にいる人間に対して「美しい顔だから。」「かっこいいから。」そんな理由で人間の顔を認識し、差別することをしないはずである。
いつからだろう。
人間は一定の価値観を強要され、そこからずれた人間を排除したがるようになる。
それは監獄的な学校がそうさせているのかもしれない。
「東京を歩いていると同じような顔だらけで気持ち悪い」
ふと振り返るとスクランブル交差点を歩く女は同じ丈のスカートを履いて同じ髪の長さで同じ歩き方で颯爽と交わっていることに気づいた。おぞましい。
個々人の価値観を持たずに、共通している価値観を伸ばすことで自らを押し殺し同調圧力に耐えようとする、それが狭い小屋のような密集した高層ビルで生活する人間の末路なのかもしれない。
内面を見ることもなく、いつか衰える可愛さを探して安い酒を片手に今日もかわいいを語る若者たち。
薄い人間はかわいいを探し続けていつか死ぬのだろうか。
違和感、きっといつまでもこの違和感が消えることはない