「沢山の人と関わりたい!もっと人から話を聞きたい!」
学生初年度を迎えた私は希望に満ち溢れていたように感じる。
毎日のように新しい日々が、新しい場所で、新しい人々と訪れ、幸せを感じていたに違いない。
「あの頃楽しかったよね…本当に楽しかったよね…変わっちゃったね」
深夜のカラオケボックスでしきりに涙ぐんで現状を悲観する友人の顔はこれからも忘れられないのだろうか。
経験というのは、積み重ねれば積み重ねるほど失うものもあるのかもしれない。
一般に経験とは良いものとされているが、その一方で何かを知ってしまうということは、「慣れ」は人の心の明度を暗くするのかもしれない。
「未知」が美しいということに未知な自分は気付かなかった。
酒を知り、セックスを知り、ヒエラルキーを知り、人間の末路や社会の汚さを垣間見て、私の心は思った以上に変化しているのかもしれない。
人に媚びなくなった自分も、経験してしまった自分も、目標も希望もなくなった自分も全部うんざりだ。嫌いだ。
今なら昔と比べて私の周りに人がいなくなった理由がわかる気がするのだ。