ただ、あの人に会うたびに自分の心が死んでいく感じがするのは、どれだけお金を持っていても死にそうな顔と死にそうな心と死にそうな言葉が私の目と耳に張り付くからだと思う。
私は、年齢を重ねることを恐れていない。
それは漠然と自分の未来に、将来に自信があるからである。
あの人はその漠然とした自信を、躊躇なく殺いでくる。
「学生の頃は」「学生だから」
あの人から発せられる言葉の数々は世界に絶望しているように聞こえる。
男性の地位は金で決まる
確かにそうかもしれない。
年相応の女にどれだけ求められてもあの人は靡かない。
あの人は本当の優しさを探しているのである。
ところで、優しさとは何だろう。
人を助けるのは優しさなのか。
人の気持ちを考えるのは優しさなのか。
人に何も言わないのが優しさなのか。
利害関係のない世界には何も存在しない。
社会は、人々は、時間は、お金は、そしてあの人は、静かにそれを教えてくれたのである。
だからこそ私があの人に優しくするのは、あの人が欲しいからではなく、ただあの人の地位と、お金と、セックスがしたいだけなのである。