なんの前触れもなく、ふと断片的に蘇る記憶に寂寥感を感じたことはないだろうか。
「見て!花火!」
ひとりがそう叫ぶと車の窓越しに見える花火を無言で皆で眺めた。
部活動帰りの倦怠感とは打って変わってきらきらと光る花火に目を奪われたあの日。
思えば、あの日の花火があの花火より、そしてあの花火より、人生で1番綺麗だったかもしれない。
「青春」という言葉に全く関心のなかったあの頃。
人々は青春である頃に青春を感じない。
振り返った時に初めて「青春」がそこにあったと気付くものだと思う。
なんと切ないのだろう。
「あの頃は良かった」「あの頃が青春だった」と現状を卑下するのが人間かもしれない。
そんな人間は醜いと感じる。
しかし、そうだとしても
1日部活動を自分なりに取り組んで試練と緊張感を乗り越えた後のあの花火には、心をほっとさせる輝きが少なくとも含まれていたのである。