ピンクが好きだった。
幼い頃、私はピンクが好きだった。
思い返せばピンクが好きだった。
文房具、授業で使う裁縫用具や習字セット、ぬいぐるみに至るまでピンクが入っているものが好きだった。
遊園地に行ったら
メリーゴーランドはピンクの可愛い馬へ
キャラクターもピンクのものを好んだ
ティーカップはピンクのものに真っしぐらに飛びつき、楽しそうに母親を待っていた
ああそういえば私の中の記憶はいつも母親と一緒だった気がする。
父親は遠くに、母親は近くに
それがいつでも私の家庭であった。
まあこれは余談だが。
幼い頃にあった、ピンクに対する気持ちのような感情を今の私は持っているのだろうか。
真っ先に、まっしぐらに、他の色に見向きすることなく飛びつけるピンクが私の中に存るのだろうか。
ピンクに感じるあの気持ちは幼い頃の記憶と共に片隅に追いやられてしまったのだろうか。
ピンクに対する無限の愛と高揚感、ただひたすらに洗脳的に、潜在的に抱いたあの感情は成長、いや退化と共に剥がれ落ちてしまったのだろうか。
数十分待った、空いた電車のなんとなく選んだこの席でふつふつとこんな疑問が思い浮かんだのである。