なんとなく、母校に行きたくなった。

友達を連れて、私はなんとなく母校に行った。

卒業してから一度も乗っていない線と一度も通っていない道を通ってなんとなく母校に行った。
 
しかし、あの道を辿り、あの風景を目の当たりにして、自分の予想以上にあの頃の記憶が鮮明に蘇ってきた。

最近通学で座っている電車と違った感触の椅子。
違う声の車内アナウンス。
3年間聞き続けた発車音。
遠のく川と景色。
高校時代に行った花火大会の最寄駅。
友達に鉢合わせして一緒に登校したあの頃。
当時好きだった人が通っていた高校の最寄駅。
いつも香る立ち食い屋の匂いに毎朝階段を掃除している清掃員。

すべてがただただ懐かしかった。
すべてに青春の香りがした。

暗い色の制服と鮮やかな身体
 
染髪されてない艶やかな黒髪


あの頃の自分が羨ましい。

どれだけ今が幸せでも、愛する人がいても、誇るべき友人がいても、あの頃にはかなわない。

その事実が悔しい。

知らなかったあの頃の自分と
知ってしまった今の自分

戻りたい

もう戻れない

様々な感情が私の中で入り混じって、しかしそれは美しく入り混じっていた