私はこの街がすきだ
特にこの街の冬がすきだ
ちょうどいい暗さの街灯
静けさの残るベッドタウン
電車から下車したサラリーマンたちはホッとした顔をして颯爽と家に帰って行く
歩いて帰ると何かを作っている香りと灯油の香りが入り混じる
行き場のないドブ沿いの猫たちは今日も生きるために食料を調達している
最寄駅の中学生は暖かそうなウィンドブレーカーを身に纏って同級生とけらけら笑いながら楽しそうに帰る
遅くまでやっている道はずれの小さなバーからは酔っ払いが歌っている声が嫌でも聞こえてくる
私は凍えた身体を丸め込んで早足で家に帰った