かつて、私が居た異国の地の星は、私にとって新鮮で、美しく、ひときわ輝いているように見えた。
あの時の私の目には、街中のあかりに蝕まれ、住処を失った日本の星達があの異国の地に一斉に集合しているかのように、それはそれは特別に見えたのだ。
あれから帰国して随分経った。
今日はほんの少し前の自分たちに終止符を打ち、別れを告げ、その地元の友人たちと語り交わす、そんな日だった。
友人たちと別れ、なんとも言えない充実感と満足感に満たされ、いつも孤独な私の心に小さな明かりが灯った時、ふと空を見上げるとそこには、昔の私では見つけられなかった無数の星が目に映った。
綺麗。
素直にそう思った。
同時に私はその時思った。
あかりのない場所で見る、はっきりと見える綺麗な星空も良いけど、よく凝らして見る秘密の夜空のような星空も美しいと。
日本社会は後者のような星空だと、私は思うのだ。