
うちには
タロウちゃんという
優しくておとなしい
犬がいました

タロウちゃんは
大学の実験動物として
白衣のポケットに
入るくらい
小さい子犬の時に
その時あたしがいた
大学の研究室にやって来ました

ひときわおとなしくて
小さな優しい子犬に
どうしてもどうしても
情が移ってしまい…
その後いろいろありましたが…
結局あたしは
タロウちゃんと
暮らしていました

ある日
タロウちゃんの
犬小屋のまわりを
一匹のグレーの猫が
歩いてきました

タロウは知らん顔

猫も知らん顔

何日かして
唸り声に気付いて
外をみると
タロウちゃんにあげた
ドッグフードをはさんで
タロウとグレー猫が
睨み合っていました


いや、
正確に言うと
猫が一方的に
タロウを牽制しています

しばらく様子をみていると
タロウちゃんが
どうぞ

そっぽを向き
ゴロンと寝そべりました

猫は唸りながら
ガツガツご飯を食べ
いなくなりましたが
翌日もその次の日も
ご飯を食べにきました

いつの間にか
1つのお皿に
2匹仲良く顔をつっこんで
ご飯を食べるように
なりました


寒い日には
タロウの犬小屋で
2匹でひっついて
寝るようになりました


2匹は穏やかに
一緒に暮らしていましたが
しばらくして
タロウが病気になりました

そして
家のみんながいない時に
ひっそり息を引き取りました…
みんなが帰宅して
急いでタロウちゃんの様子を
見に行くと
タロウちゃんの亡きがらの横に
グレーの猫が
ぴったり寄り添って
眠っていました…
タロウちゃんは
いなくなってしまったけど
猫はタロウの小屋のまわりで
その後も暮らしていました

それから数カ月後、
そのグレーの猫が
血まみれになって
うちの庭に倒れていました

動物病院に連れていくと
猫の名前を聞かれました

ん?ノラだから
名前も生年月日も判らない

名前は
ぷぅ太郎のぷぅと
呼んでいたので
ぷぅと答ました

すると獣医さんは
カルテに
「○○(あたしの苗字)ぷう」と(苦笑)
そんなわけで
タロウちゃんを
看取ってくれた
ぷぅちゃんは
うちの子になりました

ぷぅの病気は重く
手術をし、入院をし
退院するまで
2週間かかりました

外で飼うと
病気にかかりやすいと
獣医さんに言われ
退院と同時に
うち(家)猫になりました

うちの中で暮らしだすと
グレー猫は
いつの間にか白猫に…(苦笑)
きっとどこかで
飼われていたのでしょう

お粗相もせず
悪いこと全くしない
おりこうさんです

そんなだから
逆に始めは心配でした

誰かがこの子を
探しているんじゃないかって…
いつか飼い主が探しにきて
返さなくちゃならなくなるかも…
でも
お迎えもないまま
数年が経ちました

きっとこの子は
自分が
いなくなっても
あたしが淋しがらないように
タロウちゃんが
置いていってくれたんじゃ
ないかな

オレの代わりに
miccuを頼むね

タロウちゃんは
最後の最後まで優しい犬でした

そしていまは
ぷぅちゃんに
癒される毎日なのです

