愛の香り
  〜I Feel You Linger In The Air〜
2023年 (全12話) タイ


超簡単あらすじ

古い家屋パラーティップ邸の改修工事を

請け負ったジョムは、請け負った日から

知らない青年を夢で見るように。

ジョムは2年間の海外留学に行っている

恋人のオームの帰りを待っていたが、

帰国したオームの口から聞かされたのは

好きな人が出来たから別れて欲しいとい

う言葉だった。

ショックを受けたジョムは泥酔し運転し

ていた車が川に転落。

2023年から1927年10月へとタイムスリ

ップしてしまう。

川から助けられたジョムはヤイという

夢で見た青年と出会う。

ヤイもまた、夢でジョムに出会っており

運命を感じた二人は次第にお互いを求め

る存在に。

過去にタイムスリップしたジョムは、そ

こで、オームに似た青年カムセーンと

恋人であるフォンゲーウに出会う。

フォンゲーウは火事で家と父親を失い

家族を救うため、ロバートというヤイの

義理の兄と望まない結婚をすることに。

しかし、火事は土地とフォンゲーウを

手に入れるためロバートがチンピラを

雇って放火したのだった。

この事実の証拠をつかむ為、奔走する

フォンゲーウやカムセーンを手伝ううち

過去を知ることでオームが結ばれるべき

相手を知る。

そんな中、ヤイとジョムの関係が父に

バレてしまい、ヤイは幼馴染の女性と

婚約することに。

ヤイの婚約者はロバートと手を組んで

土地を手に入れることに加担したデー

トの娘ブッサボンだった。

結納の日、放火の証拠を掴んだジョム

は食事の席でロバートとデートを断罪

しロバートとデートは放火の罪で逮捕

され、婚約は破棄になる。

フォンゲーウは自由になるが、ロバート

に嫁いだフォンゲーウは、昔の自分では

無いとカムセーンの元を去ってしまう。

ヤイとジョムが落ち着きを取り戻した

頃、ヤイの夢であったフランスへの留

学が決まる。

それと同じくしてジョムの姿は次第に

薄れはじめ、1928年10月。

ジョムはヤイの元から現在へと消えた。

現在に戻ったジョムは、川に転落した

時点に戻る。

病院から退院したジョムはパラーティ

ップ邸の改修工事を進める。

思い出が積もる屋敷でジョムは当時描

いた絵の裏に書かれた未来のジョムに

宛てたヤイからの手紙を読む。

喪失感に泣き崩れるジョムの元にヤイ

が現れ再会する。

 

主評価★★★★☆(3.5)

 

 感想 

このドラマ「ラストが残念」の一言につき

ます。

ドラマを見る時は、あまり考えずに取りあ

えず、目についたものを片っ端から見るよ

うにしているせいか、最近ファンタジーを

よく引き当てます、、、

 

途中(11話)までは、まるでツルーゲネフの

初恋を読んでいるような(内容は別として)

感覚で見ることが出来ました。

ファンタジーBLというカテゴリーでは

あるものの、このドラマを見て、自由に生

きること、運命に立ち向かうこと、自分ら

しくあることの難しさを感じました。

今となっては当たり前に思えることが、

今の自分に出来ているのだろうか?と。

タイムスリップすることで人として成長

していく物語でした。

冒頭、主人公のジョムがオームに振られ

た時に「自分は何も悪いことはしていな

いのに。」と慟哭していますが、過去で

フォンゲーウに去られたカムセーンが

ジョムと同じことを言っています。

ジョムは未来を知っていて、過去でいろ

んな体験をし、苦悩し、その言葉をどの

ように受け止めたのか。

冒頭、ジョムは別人と知っているはずな

のに、オームにそっくりなカムセーンに

殴りかかっています。始めは落ち着いて

考える事が出来ずにいました。

過去に来ることで精神的に成長した

ジョムを感じます。

登場人物それぞれが苦悩し、考え方が

変化し、成長する姿が良く描かれている

作品です。

一方、憎まれ役のロバートも勧善懲悪の

悪役ではない一面も良かったと思います。

妻であるウアンプンは彼を愛していない。

それを知りつつ、いつか彼女に愛された

いと願う彼は、自分なりに彼女を大切に

扱ってきた。

第二婦人であるフォンゲーウもまた、

ロバートを愛していない。

財を築きながら、結果誰からも愛される

ことの無い孤独が彼を暴力的にしている

のは、見ていて少しかわいそうにも感じ

ました。

BLというよりは、ヒューマンドラマとし

ての仕上りが強い秀作です。

冒頭、ホラー映画のような入りも良かった

と思います。

また、11話まではファンタジー過ぎない

演出も好感度がもてました。

 

なのに・・・なぜ・・・

12話があんな感じなの?!

それまでと、打って変わったファンタジー

演出に違和感が。

透過していくあたりから、なんだか違うと

思い始め、12話冒頭の古代の戦士姿の

ヤイは単に冒頭のおぼれるジョムを救った

戦士の伏線回収に過ぎず、転生やタイムス

リップを繰り返してるなら他に描きようが

あったのではと思ってしまいます。

おそらく、ジョムが消えていく場面を

効果的かつ、劇的に描きたかったのかなぁ

と思いますが、やりすぎでは。

2023年に戻った、いよいよのラストでは

97年経っているにも関わらず、現れた

ヤイに何の躊躇もなく駆け寄るジョムにも

ちょっと違和感。

ヤイの残した絵の裏に書かれた手紙の内容

から察するに、年老いて亡くなる前に書い

たような文章です。

にも拘わらず、現状維持で現れたヤイ様。

見ている視聴者の自分でさえ

「ヤイ様はどこから来たの?!」

と、混乱。

無理やりハッピーエンドにしてみました感

が凄い。

そしてEDの最後。

あのポストクレジットシーンは要るのか?

途中にも登場する戦士のヤイ様。

これはミッドクレジットシーンとして
第2シーズンへの布石なのか?

一つ考えられるとすれば、転生を繰り返し

ながら出会っていると言いたいのかな。

って事くらい。

現代で出会えた二人を見せられた視聴者

にとっては、あまりにも無意味な映像に

感じます。

これで第2シーズン無かったら、ガチで

要らないです。

それにしても、あの恰好はあまりにも

時代がさかのぼり過ぎな気がします。

あれが、古代の戦士ではなく、軍服なら、

過去から現在に向ての布石になるのか

と思いますが、更に遡ってどうするん?

って感じです。

 

この先は個人的創作のあらすじです。

私なら、

11話のラストでジョムを現代に返すかな。

ジョムがヤイから消えて居なくなる流れを

力説して描くより、再会のプロセスを丁寧

に描くかも。

12話の冒頭は現代から始まって、改修依頼

をしたのをヤイの弟レックの子孫に。

ヤイが転生を繰り返してジョムを待ってい

たことにして、ヤイの言いつけで家屋を残

し、時期を見計らってジョムを指名で改修

依頼を出した。

そうすれば、冒頭、ボス(タネート)が電話

で「顧客の指名でなければジョムに任せな

かった。」という電話の内容も納得できる

し、最後の動かせなくなった古い箪笥(箱)

の鍵をジョムに渡した理由もわかる。

タンさんが生まれかわりの話をしたセリフ

も、もっと生きてくる気がします。

当然、12話は視聴者向けで、ジョムは

どんな思いで再会までの97年間を過ごし

たのかは知らない。

でも、ジョムが去ってからの97年を描く

ことで、ヤイの想いの強さをより感じら

れる気がします。

ジョムが現代に帰って、入院して過ごした

時間よりはるかに長い時間、再会を祈って

過ごしたヤイの時間を描くべきだったので

はと思います。

・・・ま、あくまでも自分が脚本書くなら

こうするってだけの妄想ですが。

 

 キャスト 

ジョム:

  チャーノン・サンティナトーンクン

  (ノンクン)

ヤイ:

  ラピーポン・タップスワン(ブライト)

オーム/カムセーン:

  カノックチャット・マンヤートオーン

  (タイフン)

ミン:

  カンタポン・チョムプーパン(ガイド)

フォンゲーウ/カイムック:

  ティーラティー・ブッディーホン

  (ジューン)

ウワンプン/ソムジード:

  アッタリンヤー・ウンシンシークン

  (アーリー)

ロバート:

  アーサー・アピチャート・ガニョー

  (アッティラ―)

ジェームス:

  ティティサン・グッドバーン

  (キム)

 

 

 別記 

この物語のヤイですが、もしかすると

モデルがいるとすれば、1900年代に

活躍したタイの政治家

『プリーディー・パノムヨン』かなぁ。

第2次世界大戦で日本軍に対抗した

レジスタンスのリーダーです。

フランス留学で法律と政治を学び、帰

国してからは王権を廃して立憲君主制

へとタイを導いた「タイ民主主義の父」

と言われる人物。

自由主義を唱えた政治家でもあります。

絶対王政が廃止され、民主主義になった

とは言え、軍事政権と言わざるを得ない

現状を考えると、この作品は遠回しに

民主主義って、法律の元にみんな平等

で自由に意思決定が出来るべきなんだ

よって言ってる気がします。

LGBTQ+の2組のゲイとレズビアンの

カップルを登場させることで、現状の

生きにくい政治体制を描いてるのかも

しれません。

ガチドラマで描くと批判めいて感じる

内容でも、BLにしちゃうと元来そうい

うものを描くドラマじゃないから

注目もされないだろうし。

そういう感覚でこのドラマを見ると

ちょっと違った目線で見れるかも。

 

どうでしょう。

プリーディー・パノムヨンとヤイ。

微妙に共通する部分が見えて、モデル

と言わないまでも、ちょっとしたリスペ

クトを感じる気がします。

実は軽く政治批判のドラマって考えて

見ると違った作品に見えるかも。