I Told Sunset About You(全5話)
 2020年タイ
I Promised You The moon(全5話)
 2021年タイ
(僕の愛を君の心で訳して)
 
評価:★★★★★
 
超簡単あらすじ
  I Told Sunset About You
子供の頃、ちょっとしたケンカから
疎遠になむてしまったテーとオーエウ。
高3になり、受験のために入った塾で
再会する。
お互いに好きな人が居ると話す二人
だったが、受験勉強の中、テーは
オーエウに特別な感情を抱き始める。
二人は、受験に受かったら、テーの
家からプロムテープ岬まで走ると
願掛けをし、俳優になる為、同じ大学
への進学を約束する。
お互いの気持ちを探りあいながら
オーエウはテーに対する恋愛感情を
伝えるが、自分の気持ちに自信が持てない
テーはオーエウを傷つけてしまい、
再び疎遠になったまま、受験の日を
迎えた。試験会場でオーエウと出会った
テーはオーエウとバスが付き合うことに
なったことを知りショックを受ける。
試験は散々な結果に終わり、その晩
テーは自分の感情が明確に恋愛感情で
あったことに気が付く。
受験の結果、志望校に受からなかった
テーを友人たちが心配する中、オーエウ
は、テーへの気持ちを募らせていた。
バスはそんなオーエウの気持ちを悟り
友人に戻ることに。
合格発表の翌日、オーエウは願掛けの
お礼参りを遂行するためプロムテープ岬
まで走り始め、テーはオーエウを追って
一緒に走った。
岬についた二人はお互いの想いを確認し
付き合うことになった。
 
 I Promised You The moon
別々の大学に進学したテーとオーエウだが
当初上手くいっていた交際も少しづつ
ずれが生じてくる。
お互いに俳優としての勉強をする中、
二人でオーディションを受ける。
学校の授業でもオーディションでも自分に
は才能が無いと悟ったオーエウは広告学科
に転科したことをテーに告げる。
二人で俳優を目指すという目標を捨てた
オーエウにテーは怒りを感じていた。
また、同時に女優を目指していた先輩が
夢をあきらめ就職したことを知りテーは
自分だけが取り残されたような孤独を感
じ始めていた。
大学も3年になり、仲の良いチャイ先輩
の卒業公演の主役に抜擢されるも、上手
く演じることができないでいた。
テーは相談に乗ってくれるチャイ先輩に
次第に特別な感情を抱くように。
テーはチャイ先輩とのワークショップを
行い抑えられない気持ちのまま、チャイ
先輩とキスをしてしまう。
公演のポスターを届けに来たオーエウは
その現場を見てしまう。
オーエウはテーの気持ちが離れていく事
を恐れ、芝居の為だったと自分に言い聞
かせ、テーを疑いつつ信じようとするが
公演終了の打ち上げでテーの気持ちが
チャイ先輩に向いている事を悟った
オーエウはテーに別れを告げる。
4年生になった二人は、それぞれの道で
成果を上げ、オーエウは希望する会社へ
就職が決まり、テーは卒業公演の芝居が
きっかけでスカウトされ人気俳優に。
目指していた人気俳優になり夢を叶えた
はずのテーだがどこか満たされない毎日
に疲れていた。
そんな中、仕事で立ち寄った会社で
オーエウと再会する。
テーは自身が手掛ける卒業公演でオーエウ
に復縁を申し込むが、オーエウは応じない。
しかし、テーとの再会で自分の気持ちが
揺れ動くオーエウは別れてから確認して
いなかったラインのメッセージにテーへの
想いは消えていなかったことに気が付き
テーと寄りを戻すことを決断する。
 
感想
BLっていうカテゴリでいいのか?と
思うくらい素敵な作品です。
ドラマというより映画みたい。
About YouとThe Moonでは監督さんが
違うので全体の色とか雰囲気は多少
違うのですが逆にそれがいい味になって
居ます。
 
前半の高校生時代は、ロードムービーを
見るような感覚で、美しい風景とどこか
昭和を思わせるようなセピア色の感じが
とても印象的です。
何か所かある引きでのじゃれあうシーン
は、懐かしさと二人の微妙な距離感が
よくわかってホントによいです。
前半パートはセリフは少な目です。
しかしながら、思春期の男子らしい
言えない感情、微妙な二人の距離感は
美しい風景や陰影などでよく描かれて
いて、監督さんが意図しているであろ
う視聴者に伝えたいそれぞれの感情は
素人の自分にも理解できる映像です。
それぞれの感情の微妙な動きがじっくり
と描かれていて、逆にセリフが無い部分
にこそ、このドラマの良さがあります。
それぞれの表情や動き行動で感じる
恋心は見る側に考えさせる時間と気持ち
に畳みかける猶予を与えます。
その分、よけいに泣けてしまいます。
 
後半の大学時代になると、途端に色が
違ってきます。
PAST→NOWといった感じで、これは
言葉では言えない感覚なのでぜひ見て
欲しい。
付き合い始めのウキウキした感覚から
年数が経ち大人になって行く感覚や
倦怠期からズレていく二人の距離。
前半のあの映像があってこそ、後半が
生きてくるし、全10話という、海外
ドラマでは異例の短い作品なのに、も
のすごく時間が流れている感が出てます。
テーマはBLかもしれませんが、その枠に
留まらず心に響く作品です。このドラマを
見て、懐かしさや自分の若い頃の感覚を
思い出して切なくなる方も多いのではと
感じます。
若い方より年齢層が高い方にこそ見て
欲しい作品です。
 
内容的には
100回見たら100回泣けます。
オーエウはしっかり男の子なんですが、
感情の流れは非常に女性的に感じます。
前半、オーエウがブラジャーを着て
自撮りするシーンがあります。
一瞬『ん?トランスなのか?』と思っ
てしまうシーンですが、オーエウは
決してトランスというわけではなく、
自分が女性だったらという憧れや葛藤
の現れかと思います。大学時代には
オーディションで女性っぽいと言われ
どうしても自分の中にある女性的な部分
に嘘をつくことが出来ません。
自分が俳優には向いていないと、俳優
への道をあきらめる要素にもなっていて
オーエウの根本にある重要な部分の
ように思います。
 
一方、テーは徹底して男性です。
こっちも好きだけど、あっちも好き、
みたいな。
娯楽的にBLとして女性が見る場合、
テーがちょっと「クソ」に思えるかも
しれません。
単純に見ると
高校時代は自分の気持ちを持て余す
あまり、結果オーエウもターンも傷つけ
てしまってますし、大学時代はチャイ先
輩へ気持ちがスライドしながらオーエウ
への想いも持っています。
これだけ考えると、ただの「カス」です。
 
この作品のすごい所は、やってることは
クズなのに一概にそう思えないところ。
テーやオーエウの感情の動きが非常に
丁寧に描かれているので、テーがチャイ
先輩に惹かれる理由はわかると思います。
共に同じ夢を持って生きている友達が
居ないんです。そんな孤独な中、
オーエウはプーケットに居た頃とは
違った一面を見せ始め、取り残された
ように感じたテーが演劇に関して真摯な
チャイ先輩に惹かれていくのは当然かな
と思わせるところ。
男がふっとよそ見をしてしまう描写は
絶妙です。特にオーエウと別れた後、
周りに誰もいないテーを見れば、彼が
どれだけ孤独だったかは想像に難く
ないです。
だからと言って許せませんが。
男女でも旦那が浮気したとして、嫁を
捨てて浮気相手に走る男は実際少ないです。
大抵、嫁に詫び入れて終了です。
浮気をしたにしても、一番はやっぱり嫁
という人が大半で、そういう男にしか
わからない感情が描かれているのもいい。
また、なぜテーがチャイ先輩に惹かれたか
がわかる分、一概にテーを責める気にも
なれない。
しかしながら、テーの孤独感はよくよく
考えてみればテーの我儘です。
オーエウにしても先輩にしても大人に
なって、自分の進むべき道を現実的に
見て、それぞれ選んだだけなので。
 
結果、別れた時間はいい冷却期間に
なっています。
不安定な大学時代はお互いに気持ちの
拠り所がわからずに、共依存的に
振り回されて、大事なものを見失って
いたようです。
夢を叶えたテーはその根本にあった
想いに気が付きます。
再会した二人には距離がありますが
テーがオーエウに「自分のファン?」
と聞きますがオーエウは「違う」と
応えます。「じゃぁ、何?」と聞く
テーにオーエウは「元彼」と言いか
けて止めます。友人や周りに対して
平気で「元彼」と言えていたのにテーに
対して言えなかったのは「元彼」と
単純に一言で過去にしたくない気持ちが
オーエウの中にあったからだと感じます。
ちなみに字幕は「それは・・・」です
がセリフ的には「fεε・・・」で止まっ
てます。※タイ文字書けませんが、
たまに聞き取り出来ると翻訳微妙と
感じる時はあります。
復縁を迫られたオーエウはかなり悩み
ますが、二人にとって大事な事は
何だったのかを再確認できたようで
結局、最後に復縁でハッピーエンド。
心が痛いのはオーエウの
「永遠の愛なんて約束しなくていい
ずっと変わらないなんて期待もしない」
という覚悟です。
オーエウがどれだけテーを愛している
のかが伝わります。
高校時代のプロムテープ岬で、お互い
の気持ちを寄り添わせた告白とは違い
大人になった二人があらためて、
心を通わすシーンは感動です。
ハッピーエンドが大好きな自分としては
終わり方も最高だと思います。
 
ただ、今後もこの物語があるのなら
個人的にはこの後二人は結局、無理かと
思います。
SNSで公言したところで、要は本人の
根性次第ですから。
正直、浮気癖は絶対治りません。
しかも、テーの場合、浮気じゃなくて
ややガチ目で行きそうだし。
こればっかりは性格の問題で治しよう
がない病気なんで、話し合ったところ
で結果は同じかな。
要は、そういう男に惚れたんだからと
いう、ある意味の割り切りやあきらめ
がオーエウに出来るかどうかにかかっ
ているように思います。
 
 
このドラマはキネマ旬報で特集組んで
欲しいくらい、映像も美しく、内容も
文学的で美しい作品です。
NHKでもイケるんじゃないか?
久しぶりに心がえぐられるような作品
に感動が止まりません。
が、感情移入しちゃってガチ目で心が
疲れました。
 
追記:
このドラマを見てつくづく感じたのは
『日本の若い俳優さんでここまで
出来る人っているのかな?』です。
普通の恋愛ドラマにしてもBLにして
も、海外に比べるとイマイチ足りない
感じがします。
アイドルや人気俳優を使ったそれなりの
作品はたくさんあって、それなりに
楽しめるし、いい作品もありますが、
その映像から伝わる想いとか、俳優さん
の行動や動きで見てる方が心がキリキリ
痛むような、そんな恋愛ドラマが日本
には無いように思います。
 
追記:
このドラマを見ながら、何故か
思い出したのは昔、中森明菜さんと
安田成美さんが主演の「素顔のままで」
というドラマ。
友情を描いた話ですが、なんだか今に
なって考えると友情以上の何かがあった
ように思います。
ラストが悲劇でガッカリなのですが。
 
 
キャスト
テー役: 
プティポン・アサラタナグン(ビウキン) 
オーエウ役: 
グリット・アムヌアイデシャゴン(PP)