5月の

我が家で開催される

読書会の課題本は

 

エリザベス・ジョージ・スピアの

「青銅の弓」

でした。

 

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スピアの作品は

以前

「からすが丘の魔女」

「ビーバー族のしるし」を

読んだことがありますが、

 

「青銅の弓」は初めて読みました。

本のタイトルと

この表紙の

敷居の高そうな雰囲気と

 

あらすじの

舞台はローマ帝国支配下のイスラエル。主人公ダニエルは、

ローマ人に肉親を殺され、

ゲリラの主導者ロシュのもとで、、

「青銅の弓」を合言葉にイスラエルの独立、正義の実現を夢見ていた。

そこへ、大工の子イエスが現れ、敵を愛し、互いに赦しあうことを説く。

(復刊ドットコムより引用)

 

 

 

 

 

「青銅の弓」は

イエスが出てくるから

宗教的な話と

思い込んでいて、

 

手を伸ばしていませんでした。

 

 

結論から言うと

「スピアの作品は裏切らない」

 

 

 

 

「ビーバー族のしるし」の時も

表紙の絵から

軽そうな本

(本に対して失礼なのは承知の上。

しかし、最初の見た目イメージはそう感じたのです)

 

って思って読んだら、

全然違っていて、

めちゃくちゃ読み応えある

いい本だったのです。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

今回の

「青銅の弓」、堅苦しい本かなと

読み始めると…

 

めちゃくちゃ良かった。

 

 

 

 

ローマに支配されたユダヤ。

主人公ダニエルが8歳の時、

ローマ人に父親を殺され、母もその後死んでしまった。

妹レアは父の処刑を見てしまったことで

家から出られなくなる。

 

祖母に育てられるが、困窮し、

ダニエルは

鍛冶屋に奉公に出される(売られる)が、

山に逃げて

山にいる反ローマ軍のリーダーロシュの仲間になっている。

(ロシュのグループがしていることはこそ泥ようなことでしかなかったのだけど)

 

 

彼の中は

ローマ軍への「憎しみ」が渦巻いていたけれど、

イエスとの出会いによって

もともと彼の信じていたことに対して

疑念、悩み、葛藤が生まれていく。

 

 

ダニエルの

心の動く様子が

手にとるように感じられた。

 

その心の動きが

重さや速度をもって描かれている。

 

 

スピアの文章を紡ぐ凄さよ!!

 

 

 

結末は泣かずにはいられなかった。

 

 

 

読書会では

 

山のリーダーのロシュ と イエスが

対比して描かれている

 

 

「ロシュは無法者よ」(p110)と

山で偶然出会った同年代の双子の兄妹の妹マルテテースが

言った言葉は「女の勘」が働いている

 

とか

 

描かれていないけれど

ダニエルとマルテース(またの呼び名はタシア)、

レアとローマ兵マーカス、

のその後が

ハッピーエンドであるといいなと妄想を膨らませながら願ったり、

 

 

鍛冶屋のシモンとイエスに付いているシモンは別人のようだけど

それはどこに書いてあったか

みんなで探してみたり

 

 

そして、

 

ローマ兵マーカスが言った

「この腐敗した国で、あなたの妹さんだけが救いだった」(p 333)の

マーカスにとって「腐敗した国」に見えたのはどんなところだったのだろう。

 

とか。

 

 

はなしは尽きませんでした。

 

 

 

今回の読書会で

読んでいっても、

「そんなこと書いてあったっけ?」とか、

読んではいてもスルーしていたりする箇所があったことに

話すことで気づいて、

さらに物語が深まっていくのが楽しい。

 

 

数年後、「青銅の弓」を

読んだらまた違う気づきや感想が

出そうで面白いかもしれないな〜。

 

 

 

 

昔、図書館で児童書の読書会があった頃、

80代の読み聞かせ活動をなさっていた方が

登場人物の感想を近所にいる人みたいな感じで

おっしゃっていたけれど、

(「あの人は本当に悪いですね〜」とか)

 

 

最近の私もその先輩の感じ方に近くて、

 

今回は

「最後、あの子、ホンマによかったね〜」

と近所のおばちゃんのように泣きながら思いました。

 

 

それは歳を重ねたからなのか、

物語にどっぷり入っているからなのか、

どっちもなのかな?なんて、読書会の人たちと

話しました。

(アニメ、映画、観劇でも昔より入り込んでしまう傾向がある気がする)

 

 

 

 

さて、この本のタイトル

「青銅の弓」は、旧約聖書に出てくるダビテ(王)の詩、

 

「ー神こそ、わが力強きとりで。

 わが道を教えたまえり。

 わが足を雌鹿のごとくなし

 われを高きところに立たしめたもう。

 

 神わが手に戦いを教えたまえば、

 わが腕は、青銅の弓をも引く」

 

 

からきたもの。

 

 

青銅の弓は人を殺すための武器なのか

それとも?

 

 

 

 

ダニエルが

「青銅の弓なんてどんなに強い男でもひけるわけない」と、

言ったら

タシアは

本当の青銅だと言い、

「神が力をかしてくだされば、わたしたちは、

不可能と見えることもできるのです。」(p122)

 

と言った。

ここって、最後につながる言葉だったかもしれないなと、

振り返って気がつく。

 

 

 

(ネタバレになってしまうけれど、)

私の中で

響いた台詞の一つ

 

イエスがダニエルに言った言葉

「そんなこと不可能だと、あなたは思うでしょう?

わかりませんか、ダニエル? 

ほんとうの敵は、憎しみです。人ではないのです。

憎しみは、殺しても死にません。百倍にも膨れあがるのみです。

憎しみよりも強いものは、愛だけです。」(p298)

 

 

これを何度も読んだ時に

私の中のぐるぐるが

少し腑に落ちた

 

 

 

 

 

 

この「青銅の弓」は

残念ながら、今は絶版になっています。

 

再販してほしいよ。

 

 

中学生から読めると思うけど、

大人にも読んでもらいたいよ。

 

 

 

 

この本を

今血が流れている世界にばらまきたいよ。

 

 

 

訳者の渡辺茂男さんも

この作品と出会ってから翻訳するまでには

時間がかかったそうです。

その気持ちわかるな〜と

あとがきを読みながら共感しました。

 

 

渡辺茂男さんが

訳してくださったから

私に届いた訳で

 

 

感謝しかありません。