アカリン@R18性欲強めカップルの家族誕生小説執筆

 

 

 

オリジナルストーリー、人物の賀城修二と桃瀬里美の物語をひたすら掲載。

pixiv同様サンプル版を掲載していきます。

R18を含む、性欲強めカップルの物語。

大学生時代〜結婚〜妊娠、出産……国立大出身、両親のいない夫婦が家族をつくる。

以降連載中。

【5と0の付く日+気まぐれで更新中。毎月全6回+α更新。】 

《未来への足跡》 1〜17話 全体公開中

 

※Twitterにて支援者さま向け裏話や更新情報など呟いてます。

 

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ドイツ時代に付き合っていた彼とのことを思い出していた里美。
それぞれ別の暮らしをしていたあの頃から数年、今の賀城家は…
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クリスマスの時期になると思い出す。

あのドイツで一緒に過ごした彼は今、元気でいるのだろうか。

沢山の愛を貰い、沢山身体も重ね、心から大好きだった彼。

私は今、幸せな毎日を懸命に生きています。

 

 

ドイツ語では『シュトレン』の発音が近くて、『Stollen』と表記する。

固くてたくさんのナッツやドライフルーツが練り込まれた、スパイシーでケーキなのかパンなのか、何とも言えない食感だ。

それを毎日少しずつ食べるのがドイツの伝統的な食べ方なのだ。

私は好きでも嫌いでもないけど、あのドイツにいた頃の色々な事を懐かしく思い出させてくれる。

ふと立ち寄ったパン屋で見つけたシュートレン。

 

「うっわぁ…お値段、結構するのね…」

「ドイツにいた頃、この時期よく見かけたけどな。買うか?」

「懐かしいわね。どうする?修二くんシュートレン、好き?」

「シュトレンを好きって人はあんまりいないんじゃないか?俺も…まぁ、あったら食べるだろうけど。毎日はいらんぞ。」

 

クリスマスまでのアドベントの期間、発祥地であるドイツでは毎日薄く切ったシュートレンを食べるのだ。

目の前に並んでいるシュートレンはなかなか大きく、お値段は二千円弱。

まだ、我が家の子どもたちはこういった物は食べられないし、大人二人なら十分なサイズだが元々はシュートレンには馴染みがなかった純日本人なのだ。

数年ドイツに滞在していたとは言え、そこまでの思い入れはない。

それに私も修二くんも、子どもの頃にそうして育ったわけでもなくドイツ勤務でその存在に触れたし、シュートレンをこの時期に日本でよく見かけるようになったのもここ数年のことのように感じる。

 

ベビーカーを押す修二くんが何かを思った様に呟く。

 

「シュトレンねぇ…」

「何か思い出でも?」

「いや…あの頃さ、現地で親しかった女の子から丸々一本貰ったことがあったなって思い出してね。男一人でどうしろって感じだよな。」

「食べたの?」

「まぁね、お菓子感覚でたまにね。本当は毎日食べる物らしいぞ。」

「そーよ?」

 

そのシュートレンをくれたという修二くんと女性の関係が気になったけど、あの頃現地で彼女と呼べる存在はいなかったと聞いていたし、そこは触れないでおいた。

何だかんだ、その見た目の懐かしさで購入に踏み切り、

それと同時に私はあの頃の彼のことを思い出していた。

私は入職して二年目の春、ドイツを主としたヨーロッパ支部へと任命された。

ドイツには丁度二年前に別れた修二くんが居ることも知っていたけど、連絡を取ることはなかったしする事もしなかった。

そして以降、意外にも職場で出会うことは無く、再び顔を合わせる事となったのはそれから二年とちょっと経った頃、日本に帰国してからの事だった。

あの頃、付き合っていた現地の彼は今、何をしているのだろうか。

 

 

「ドイツのクリスマスってどんな感じなの?」

「色々と教えてあげたいし、そうしたらマーケットに行こうか。久々にデートもしたいしさ。」

 

クリスマスマーケットに連れて行ってくれると言われたもののそれが何なのかもよく分からず、まだ拙い私のドイツ語も色々と察してリードしてくれる優しい彼だった。

 

「私、全然ドイツのクリスマスは分からないわ。」

「クリスマスマーケットだけど、フランクフルトとシュトゥットガルト、里美はどっちに行きたい?」

「えーっとね、全然分からない。ごめん…何が違うの?」

「そうだなぁ、フランクフルトは歴史のある古いマーケットで、シュトゥットガルトは世界最大とも言われているよ。」

「そうしたら、シュトゥットガルトに行ってみたい!」

 

そんな経緯で週末、人生初のクリスマスマーケットにで向いたのだ。

提案されたフランクフルトとシュトゥットガルトがそれぞれ逆方面に位置する事だけは分かっていたけど、私たちの職場はその中間地点に位置し、そこから数十分のエリアに居住していた。

 

 

当日

 

彼の運転で現地に到着すると、既に華やかで色とりどりに彩られた風景が広がっていた。

クリスマスオーナメントやグッズなどのアイテムを買える場所とばかり思っていたのたが、実際に出向いてみると遊園地のようなアトラクションがあったり食べ物やドリンクを購入できたり、思いの外楽しい場所だと知った。

 

「クリスマス、うちの実家で過ごさないか?両親にも里美の事は話してあるよ。仕事終わったら一緒にどう?」

「それって…」

「そんな堅苦しく考えないで。クリスマスだし、里美はこっちで過ごすの初めてだろ?俺たちは付き合ってるんだし、今後のためにも家族に紹介したいんだ。休日だしみんな揃ってるしいいタイミングだと思うんだ。」

「わかったわ。私も楽しみにしてる。」

 

マーケットで過ごした後、レストランで夕飯を済ますとそのまま彼の家へと向かったのを覚えている。

 

『修二くんとだったら…』

 

新しい彼がいるのにそんな事を考えていた私は、きっと昔を忘れられていなかったのだ。

あの時私から別れを告げたはずなのに、あんなに沢山泣いたのに、修二くんにも辛い思いをさせて不安になるような姿を見せておいて。

結局、どちらも辛い思いをしたたけなのだろうか。

 

 

クリスマス当日は仕事だった。

職業柄、カレンダー通りに過ごすわけにもいかず、祝日とはいえ稼働するのが我々の宿命なのだ。

仕事を終え車で彼の実家に向かうと、弟たちを含む家族が揃っていた。

日本育ちの私にとって、ツリーをクリスマス当日にデコレーションするのも、プレゼントを包むのも、豪勢な手作り料理を前に家族で過ごすのもどれも新鮮でしかなかった。

特に私にとってお母さんが作る料理で過ごすクリスマスは、遥か昔の頭の片隅にあるかもしれない、小さな記憶でしかなかったのだ。

 

「ようこそ里美。楽しんでね。ゆっくりして、泊まって行って。」

「ありがとうございます。」

 

優しそうなお母さんに、ずっと微笑んでいるお父さん。

それから日本でいう高校生と小学生の弟と妹。

高校生の弟の方は、私の妹と同い年だと伝えると何故か盛り上がった。

食事が始まると、結婚前提に付き合っていた私たちは彼のご両親にその事を伝えた。

 

「早く孫に会いたいわ。」

 

原文4541文字

《続きはfanboxにて更新中。 https://akarinrin.fanbox.cc/》
※FANBOXより遅れて更新のため2月のクリスマスネタです。