アカリン@R18性欲強めカップルの家族誕生小説執筆
オリジナルストーリー、人物の賀城修二と桃瀬里美の物語をひたすら掲載。
pixiv同様サンプル版を掲載していきます。
R18を含む、性欲強めカップルの物語。
大学生時代〜結婚〜妊娠、出産……国立大出身、両親のいない夫婦が家族をつくる。
以降連載中。
【5と0の付く日+気まぐれで更新中。毎月全6回+α更新。】
《未来への足跡》 1〜17話 全体公開中
※Twitterにて支援者さま向け裏話や更新情報など呟いてます。
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互いに準備は整っているのに、その先の行為に進む事のできないもどかしさ。
その行為に進めずにいるのは何故なのか。
二人が日本に帰国し、再び付き合う前の何の関係でもない頃の出来事。
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「もうそれ、言わないでくれる?今はそう思う心の余裕ないの。」
ピリピリとした雰囲気の中、里美が久しぶりに機嫌を損ね修二のアパートを飛び出した。
「おい!待てって!」
やはり再び恋人同士になんてなれないのかもしれない。
この先、長く一緒にいるためには互いを思いやる心が必要なのだ。
きっと二人はそのような運命ではなかったのだから。
…
修二はここ数週間、任務の都合により昼夜逆転の生活が続いていた。
やっと明日は二人揃っての休日。
金曜の夜は職場から修二のアパートへ向かうのが毎週のルーティーンとなっていた。
今は恋人同士でも何でもない男女の関係。
社会人にもなればそこは自己責任であり、他人が口出しする権利はない。
実は数日前、修二のアパートにいる時に言い合いをした。
あの日は二人ともアルコールが入っていたし、記憶は定かではないけれど、言えることは里美がアパートを自ら出て行ったということ。
里美は仕事の愚痴やら今度二人で行ってみたい場所なんかを話していたが、昼夜逆転の生活が続いている修二にとって疲労と眠気によりそれどころではなかったのだ。
何を思ったか、修二は年明け早々に二人して心に負った悲しい出来事を掘り返す話を始め、不穏な空気を作り上げる。
「俺さぁ、やっぱり子ども欲しいんだよ。落ち着いたらまた…」
「もうそれ言わないでくれる?今はそう思う心の余裕ないの。それに私たち、付き合ってるわけでもないわよね?」
里美は怒っている。
『何に』とははっきり言わないが、原因は疲労と眠さでの思考の中、里美にとって今はまだ触れたくない事を軽々しく口にしてしまった事だろうと修二は直ぐに気づいた。
「あっ…悪かっ…」
しかしそれは修二の本心であり、冷静になって考えればこれからも一緒に居たいと言ってくれているような、里美にとってはありがたい言葉なのに。
「今日は帰るね。」
「待てって!」
咄嗟に部屋を飛び出し、下半身をショーツを身に付けただけの姿の修二が追いかけて来られぬようすぐに裏道に回る。
里美はアパートから走れば3分ほどの駅前でタクシーに乗り込むと、そのまま自分のマンションまで走らせた。
…
先日の、そんな出来事を思い出しながら修二のアパートへ向かうがどうにも気が乗らない。
いつも通り部屋には入れてくれるのだろうか?
そもそも鍵を開けてくれるのだろうか?
正直言うと、咄嗟に出て行く程の事ではなかったような気もする。
自分の考えを素直に伝え、将来について話し合えばこんな状況にはなっていなかったと思う。
先日言い合いをして修二のアパートを飛び出した日から、職場でも顔を合わせていないし連絡も取っていないが、何となくメッセージを入れることも悔しく直接アパートへ向かうことにした。
あの日から数日後、修二は電話やメッセージも送ってくれたのだが、里美がその手段に応じなかったのだ。
…
玄関のチャイムを鳴らす。
しかし反応が無いことから不在なのだろう。
合鍵の無い里美は仕方なく玄関先に座り込み待つが、修二がその事を知る由もない。
小雨が降り始め次第に本格的な雨へと変わると、手足の感覚が鈍り始め手袋をした手をぎゅっと握りしめ吐息を吹きかける。
そういえば、週間天気で雪マークを見たような気がしたがそれが今日だったのだろうか。
念のためもう一度チャイムを鳴らして出なければ帰ろうと心に決め鳴らすが、やはり出なかった。
『他の女と寝ているのかもしれない。』
里美にそんな考えが頭に浮かぶと、何度チャイムを鳴らしても反応がない理由は当然であると理解し、諦めその場を立ち去った。
駅までの道、みぞれが降り続く商店街を傘もなくとぼとぼと歩くと、急に悲しみが込み上げ冷たい水分が染み込むブーツが不快で涙を誘う。
修二が他の女と居たってそれは何も悪いことではなく、キスをしようがセックスしようが里美には関係のないことで何を言う権利もないのだが、その風景を想像するだけで何故か心が傷んだ。
先月予想外の妊娠をして、ダメになって、現実を見て、修二は里美との中途半端な関係を断ち切ろうと決めたのだろう。
どれもきっと運命で、初めから決まっていたことなのだろうが、その結果が今日のこの出来事。
それに先日意味のわからない事で、子どものような態度を取ってしまったから。
毎週金曜、二人だけで過ごすこのルーティーンも今日で最後なのだと思うと、一言もなく終わってしまう現実に不思議と悲しみが押し寄せる。
「…桃瀬?」
里美の元に降り注ぐみぞれが止み、マフラーの奥深くに口元を埋めたまま、ふと顔を上げると頭上に差し出されたビニール傘。
「……修二くん?」
「どうした?こんな所で…傘は?もしかして家に来てた?」
「行ったよ、だって今日金曜だもん。」
「悪い、けど先週話したよな?今日は何時になるか分からないから約束出来ないって…」
里美はそんな話もあった様な、脳内の片隅に転がっていた記憶を今になって寄せ集める。
「ごめん、合鍵も渡しておけば良かったよな…」
「合鍵は要らないわよ。」
彼女でもない女が合鍵など貰う権利はないし、欲しいとも思って居なかった。
きっとそのうち修二にも正式な彼女ができてこんな関係も終わるだろうし、その逆だってあり得る。
「こんなに冷えて…ほら、家行こう。」
修二の大きくブカブカなコートを肩に掛けられるとぎゅっと肩を寄せられ歩く。
「寒かっただろ…どっか店入ってれば良かったのに…」
グズグズと泣きながら歩く商店街。
温かな声と優しさに、昔も今も守られることが心地良く里美には必要だった。
この中途半端な関係の自分に何故こんなにも優しくするのだろうか。
気心知れた関係だから、性欲の捌け口として上手く使われているのだろうか。
「もう泣くなって…悪かった。」
「ブーツの中、濡れてぐちょぐちょで気持ち悪いし冷たいの…」
そんな子どもの様な理由でグズグズと泣く里美が急に可愛く見え、修二は一秒でも早く温かな風呂に入れてやりたかった。
だが、本当は違う。
様々な感情が交錯し、里美自身も涙が溢れる理由がわからなかった。
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