2008年3月1日。

パリ、モンパルナスの映画館にて鑑賞した映画、

その名も『パリ』。


セドリック・クラピッシュ×ロマン・デュリスの最新作です。


Le temps des cerises*


もともとクラピッシュの作品はとても好きなのだけれど、

この作品は、私にとって特別な一作となりました。


偽りじゃない、創られたイメージの姿でもない。

ありのままのパリの様子をとらえていて、

だからこそ心に沁み入ったのかな、と

当時パリに生きるひとりの外国人だった私は感じていた。


パレ・ロワイヤルや、私の通ったソルボンヌ周辺、パンテオン、

私の住んでいたエッフェル塔界隈に、好きだったモンマルトル・・・


それぞれの日常を映画の中にみることができ、

そこに個人的な思い出や感情が混じり合って、

この作品の効果が増しているのかな、と思ったり。


あらゆる人種が生活するパリにおける、

さまざまな立場の人々の関係の絡み合いも

この作品ではみることができるけれど、

それは映画だから特別なのではなく、

現実のパリであり、普段の生活の様子。


それをアパルトマンの高みから見下ろすのが、

病におかされたひとりの青年(ロマン・デュリス)。

彼の役割は、詩人のそれにとてもよく似ていて、

例えば19世紀パリ大改造におけるボードレールであったり、

戦後のミシェル・レリスだったり。

群衆に交わることなく、ただの傍観者

spectateur qui n'a pas été dans le bain

としてしか存在しえなかった孤高の文学者たちを彷彿とさせる。


日本での公開を、待ちわびていました。

ずっと ずっと・・・


そしてそれは、思いがけず早々に叶うこととなり、

12月20日より、渋谷bunkamura ル・シネマにて公開とのこと。


私自身がもう1度足を運ぶことは当然なのだけれど、

本国フランスでも話題となったこの作品を

多くの日本人の方にも観てほしい!と、切に願っております。